第10首~第15首&ショートエッセイ「雨」

六首連作


「いつもので」「水だけでいい?」「かまわんよ」そんな会話のできる店にて


控えめな小さい文字で書いてある「自家焙煎」の火に力あり


午後十時。海を渡った豆たちが煙突抜けて故郷の空へ


変わらない色、味、香り、軋む椅子。いつかなくなるその日が怖い


空は青コーヒーは黒 空は黒コーヒーも黒 私はブルー


マスターのハンドピックに弾かれてスプレモのキミもボクと同じ


§


エッセイテーマ「雨」


「雨」と聞くと、旧友の影響でジミー・クリフの「I Can See Clearly Now」が頭の中に流れてきます。それはもう、事あるごとに旧友が口ずさんでいたので。

 その歌の中で「雨」は障害物の象徴で、「青空」や「虹」を明るい未来や希望としているのです。なんと陳腐で安っぽいことか! よく言えばキャッチ―なのでしょう(確かに私も覚えてしまっていますし)。

 雨はいつか止む。障害物は消えてなくなる。きっと何もかもうまくいく。明るい未来が待っている。「いっつごなびーおーらい」

 そんなアメリカンに二極化した良し悪しにとらわれず、私は雨に降られても気にしないようにしています。障害があっても気にしない。……ように努力しています。ただ、諦めだけは確実に良い方なのですよね。

 できれば雨は室内にいるうちに降ってくれと願いはしますが、雨に降られたとしても気にしません。しょうがないね、と諦めます。彼女にフラれたとしても気にしません。しょうがないね、と諦めます。

 蛇足ですが、旧正月を祝う「長崎ランタンフェスティバル」は雨の方が格別に美しいです。


§


短歌、エッセイ共に、同一冊子、同一号に寄稿したもの。もしかしたら手元にある人もいたりして。

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