第17話 おっぱいと反面教師
(おっぱいと反面教師)
「私のことはいいから、話の続き、でもさっき、梅は梅っていったじゃない」
「そう、基本的にわね。命の生まれ変わりは入れ替わりだから……、でも現実問題、一つの細胞だって、かなり頻繁にエラーを起こして生れてくるのよ。普通はアポトーシスするけど、それが癌として成長する時もあるから……、だから、動物が間違って人間に生まれ変わっても不思議ではないわ。反対に、動物のような生活をしていた人が、牛や豚に生まれ変わってもおかしくないわね。だから犬のような人、馬のような人、牛のような人、見るからに動物に似ている人っているじゃない……、何世代か前は、動物だったかもしれないわね。そうして考えると、確かに同じ一つの命が繰り返し生まれ変っているのだけれども、その繰り返しの中で、少しずつ変わっていくところがあっても不思議ではないわよね。今度、生まれ変る時は、人間とは限らないかもしれないわよ。毎日、働きもせづに食べては寝るだけの生活の人は、今度生まれてくるときは、豚かもしれない……」
「それも、私のことでしょうっ!」
「あたり、つまり、命、生命と言うやつは生と死を繰り返しながら、運命と言う渦の中で、その命の重さにあった姿に変わっていくものかもしれないわね……」
「命の重さ? 体重……?」
「バカ、重さと言ったら変かもしれないけど、生きているときの生活とか経験だよね。それが命の重さとなって、次の生への基礎になるんじゃないの……、さっきの自殺の話に付け加えれば、例え今の苦しみから逃れようと自殺しても、今度生まれ変わる時は、人間とは限らないわね。自分で生きることを否定したのだから、生まれ変わるとしたら、短命な昆虫かもしれないわね。それも、蠅とか蚊なんかに生まれ変わったら最悪ね。人間に殺虫剤でシューってやられていちころね。殺されなくても冬の寒さに凍えて死んでいく……、そして、また生まれ変わり、また死んでいく。まさに地獄かもしれないわ……」
美晴の付け加えた話が、一番怖く感じた。
「それって、すごい説得力。今の苦しみから逃れたくて自殺したのに、待っている次の世界は、もっと凄まじい殺戮の世界となれば死ぬの考え直すかもねー」
「そうよ、例え人間に生まれたとしても、平和な日本とは限らないのよ。戦争の中で生まれて、食べたくても食べ物がなく、ひもじさに明け暮れて十歳で銃を取って、十二歳で爆弾に吹き飛ばされて死ぬとか、現実にそういう国もあるんだから……」
「そうよんねー、自殺する人も、もっと考えて欲しいわよね。次に生まれるときのことを、自分で死ぬんだから、まともな世界に生まれ変わることなんかないんだから、今の生活と生まれ変わったところの生活、どちらがより苦しいのか、戦争している世界に生まれ変わったつもりで、サバイバル、命をかけて戦えばいいのに……、この平和な日本で……」
「幸子、少しは人の存在する意味がわかってきたねー」
「え、存在する意味って何?」
「バカねー、さっきも言ったでしょうー、私たちがここに居るということは、過去から永遠につながっている行いの結果として存在しているのよ。そして、未来はこれからどう生きるかで変わっていくの……」
「そうね……、それなら私はやっぱり、猫がいいなー!」
「ぜんぜん、わかってないっ!」
「わかっているわよー、でも、美晴ってやっぱりすごいね。いつそんなこと考えたの?」
私は、ベットから起き上がって床に落ちた布団を拾った。
拾ったまま布団をベットに投げあげて、私はすかさず寝転がって落ちてくる布団を掴んで着なおした。
「なに、それて褒めてくれているの?」
「褒めているわよー、人の生まれ変わりなんて、普通の大学生じゃ考えないもの……」
「おいおい、大学生ならそれくらい考えろよっ!」
「大学生の考えることは、合コンの予定と、いい男のことだけよ……」
「世も末だよー、でも人は生まれ変わるといったのは、私じゃないわよ!」
「誰なの、……?」
「お釈迦様。私の話の半分はお釈迦様、後半分は幸子ね。幸子がメランコリックになって死ぬとか生きるとか言っているから、私も釣られて考えてみただけよ。あんたは、自分では気がつかないかもしれないけど、私にはない素晴らしい才能を持っているわ。物語の主人公になれるね……」
私は電話を持ち替えて、右のおっぱいも掴んで、よい子よい子と撫でてやる。
「それって、褒めてくれているのかな?」
「もちろんよー、人を飽きさせないという、どたばた喜劇の主人公よっ!」
「それって褒めてないー!」
「そうかな……? 私は幸子みたいになれたら、小説のネタに困ることがないと思って、羨ましく思っているけどねー!」
「うそ、さっきは反面教師にしているって言ってたのに……、やっぱり教師代もらわなくっちゃ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます