22.ハッピーエンドに思いを馳せて。
「いやぁ、転校してみるもんですね」
「そうか?」
放課後。
俺“たち”は一緒に帰路についていた。
たち、の構成メンバーは以下の通り。
俺(
妹(
文学少女・
そんなわけで、上記四人のパーティーでお届けする、俺らの下校冒険記だが、最初に旅の仲間となったのは他でもない、こまちだ。
昨日はたまたまそうならなかったが、どうやら俺とこまちは、それこそ終業の時間が大きくズレでもしない限りは一緒に登下校しているらしい。
言い出したのは当然こまちの方。最初の言い訳は「ほら、迷うといけないから。教えてよ」だった。が、そんなわけはない。なにせ、過去二年間の学園祭に、この妹は誰に案内されるでもなく、一切迷わずに顔を出しては、俺が店番をしている模擬店の屋台を冷やかしていたのだ。
たった二回。
されど二回だ。
そもそも、日々の買い出しで、特売をやっているちょっと遠くのスーパーへと足を伸ばすことが日常茶飯事となっている妹が、家から徒歩十分もかからない位置にある学校への道を知らないわけがない。
今は俺に「先に二年間通っていた」というアドバンテージがあるからいいものの、もしこれが同学年としてのスタートなら、むしろ、案内されるのは俺の方だったはずだ。
そんなこまちが「道に迷う」などということはまずありえない。
ありえないのだが、そのありもしない可能性を理由に、俺とこまちは、今日までほぼ毎日、一緒に登下校していたのだ。
これがブラコンじゃなかったら一体なんだというのか。
けれど、こまちはそれをけして認めない。
それはきっと、彼女の心にもっと深く入り込まないと教えてもらえないことなのだろう。
片方のベクトルが大きいだけの、仲の良い兄妹から、それ以上の関係にならない限りは。
思う。
そんな時は来るのだろうか。
何を言っているんだという気もする。気もするが、世のラブコメには禁断の兄弟姉妹間恋愛が堂々とまかり通っているものが少なくない。
なんだったら、単純な愛情を通り越して肉体関係にまでがっつりと踏み込んだ完全アウトのものだってある。
そんなものはあくまでフィクション。作り話。近いようで遠い、俺たちの人生とは全く関係の無い話。
と、本来なら言い切るのだ。
そう。ここが、完全なる
改めて思う。
このセカイは一体なんなのだろうか。
一体どこに向かっているのだろうか。
正解は、あるのだろうか。
人生には決まった正解はない。
自分が正解だと思っていれば正解だし、間違いだと思っていれば間違いだ。
一発で死刑確定の猟奇的連続殺人をはたしていようと、自らの死すらも芸術としてみなし、最後の最後まで笑っていられるのであれば、当人にとっては正解だろうし、どれだけの富を築き、世界中の人々から感謝されようとも、最愛の人一人救うことが出来ないだけで、間違いかもしれない。
それらはあくまで自分の心が決めることだ。
が、ゲームにはバッドエンドがある。
どのヒロインとも仲良くなりきれず、男友達と二人語らうだけのあっさりしたものだったり、作品によっては、選択が世界の滅亡に繋がることが、ある。
今、俺が立つこのセカイも、その類のものなのではないだろうか。
もし、そうだとしたら、このセカイにも「バッドエンド」はあるのだろうか。
そうなった時、俺は一体どうなってしまうのだろうか。
こまちは、
自分は「トゥルーエンドのヒロイン」なのだと。
通常なら冗談として鼻で笑い飛ばして終わりのその言葉を信じるのであれば、俺は、それぞれのヒロインを全て「攻略」することになる。
その後は、どうなるのだろう。
ゲームプレイヤーなら、その記憶は確かに残っている。
けど、俺は?
また、一からやり直すのだろうか。
こまちに起こされたあの朝から。
その先に、トゥルールートなど、転がっているのだろうか。
分からない。
分からないことだらけだ。
が、分かることもある。
「はい。やー天野さん、なかなかどうして話の分かる人じゃないですか。私、思わず連絡先まで交換しちゃいましたよ。こんなこと、あんまりないんですよ?奇跡です、奇跡」
このセカイのメインヒロインは誰か、と問われれば間違いなく彼女だ。
だからきっと、彼女を通じて見えることも多いはずだ。
こういう場合どうすればいいんだろう。
分からない。ゲームなら、選択肢が出てくるから、他のヒロインに対するフラグをばっきばきにへし折って、小峯のルートへと突入するように選択していくんだけど、そんなものはこのセカイにはないからな。前に、そういうのが目に見えるみたいなifを描いたラブコメがあった気がするけど、ああいう風になってくれないかなぁ……
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