第51話 因縁

「ミナモちゃん、今度は私達でいくよ。」

「はい・・・!」

ミナモちゃんの魔力を受け取り、前方に再び現れた『魔装具』を身に付けた敵へ、斬撃を飛ばす。


「ぐあっ・・・!」

「馬鹿な・・・!!」

それは固い装備の一部を砕き、『城塞都市』での戦いと同じように、相手の意識を失わせた。


「うん。しっかり魔力を込めて狙いをつければ、このやり方でも十分に倒せそうだね。」

「良かったです! あの敵相手に接近戦を続けるのは、さすがに心配になってしまいますから。」


「さあ、次はどいつかしら!?」

「・・・うん、あんな風にね。」

「・・・シノさん、大丈夫ですか?」

「まだ本当に危なそうなところは無い。でも、後で夜美花やみかと話がしたい・・・」

槍へと形を戻したシロガネの武具を手に、相手が『魔装具』持ちか否かを問わず、貫こうとするヒカリと、万一の場合に備えて護りの魔法を準備するシノを、私達は心配と共に見つめた。

後でヒカリが夜美花さんに怒られるのは、確実だろうなあ・・・



「まあ、前衛が手厚い分には、こちらとしてはやりやすいかしら。そっちに『魔装具』を付けていないのが多めにいるから、私が仕留めるわ。」

シエラが苦笑を浮かべつつも、敵全体を見渡して火の魔法を放つ。


「サクラとミナモ、それにヒカリさんが『魔装具』持ちに集中できるよう、私達は他のを頑張って倒そう。ティア、あっち・・・!」

「ああ、任せとけ、メイ・・・!」

ティアが魔道具から光を放ち、数人を倒すと、メイが短刀を手に、乱れた敵陣へと飛び込んでゆく。

メイも私達の次くらいには感知が得意だし、敵の増援が現れやすい状況で、頼もしくなっている。



「さすがにテンマの主となる拠点、それなりの大きさね。

 サクラ、ミナモ。敵の中枢はこちらで合っているかしら?」

「うん、このまま真っ直ぐだね。」

「はい、強い気配を感じます・・・・!」

ヒカリに答える、ミナモちゃんの声が少しだけ震えたのに気付いて、ぎゅっと手を握る。次の敵が現れるまで、こうしていても良いだろう。


「サクラさん・・・」

「ミナモちゃん、何かあったのは分かるよ。」


「はい・・・・全部思い出したつもりでしたが、こういうところは曖昧だったんですね。

 この先にある気配はきっと・・・スイゲツの国で、お母様と私を襲撃した部隊です。」

「そう・・・調子が悪くなりそうなら、いつでも後ろに下がってね。いや、そんなことを言うのは、もう失礼かな。」


「ありがとうございます、サクラさん。私は戦えますし、そばにいたほうが絶対に良いですよね? だから・・・今はぎゅってしてもらえると、嬉しいです。」

「うん、もちろん!」

ミナモちゃんと繋いだ手を引き、ぴったりと身体を寄せ合いながら、皆と一緒に拠点の中枢へと足を進めた。



*****



「では・・・行くわよ!」

強い気配を感知した、その扉の前にたどり着き、ヒカリが合図をすると共に、魔力を込めた槍で吹き飛ばす。


「来たぞ・・・!」

「仕留めろ・・・!」

「そうはさせない。」

それに怯むことなく、飛び込んできた数人を、シノの護りが防いだ。


「お返しよ!」

「斬る・・・!」

「「があっ・・・!!」」

攻撃を弾かれた敵に対し、ヒカリが槍を突き出し、私もミナモちゃんの魔力を込めて剣を走らせる。それは『魔装具』を的確に破壊し、相手の意識を失わせた。


「陣を組め。守りを固めて奴らを・・・」

「ティア。」

「掃射光弾!!」

敵が陣形を組もうとしたのを察し、シエラの指示でティアが光の弾を相手方に撃ち込む。


「サクラさん!」

「うん、行くよ!」

ミナモちゃんが私に抱き付き、魔力を渡してくれると同時に、風魔法を纏いながら前進。視界を奪われた敵の気配を感知し、続け様に『魔装具』を破壊した。


「ヒカリさん、その方向に三人です。」

「ええ・・・吹き飛びなさい!」

その混乱の反対側を狙い、武器の形を弓矢に変えたヒカリが、メイの補助を受けつつ、周囲もろとも破壊する勢いで矢を放った。



「くっ・・・! 瞬く間に半壊とは・・・っ! お前は!!」

飛び退いた敵の首領らしき相手が、ミナモちゃんを見て表情を変える。


「私を知っているようですが、これからやることが、何か変わるのでしょうか?」

「はっ! そうだな。やるぞお前ら!」

それに対し、平然とした様子で答えるミナモちゃんに、敵の首領がにやりと笑いながら、残る手勢に指示を出した。


ぎゅっと抱き付いたままの、ミナモちゃんの体と声が少しだけ震えていたことは、私だけが知っていればいい。




「これで終わりよ!」

「そうはさせん!」


「いえ、これで・・・」

「止めだよ!」

やがて、最後の一人となった敵の首領が、ヒカリの攻撃を受け止めたものの、ミナモちゃんの魔力を乗せた私の剣が『魔装具』を斬り裂き、その場に崩れ落ちる。


初めに不意打ちに成功したのが私達だったから、終始戦いを有利に運べたけれど、それなりに手間はかかったし、彼らも精鋭だったのだろう。


「全く、親子揃って・・・・・・」

「・・・!」

最後に敵の首領が残した言葉に、ミナモちゃんの表情が少しだけ動く。


「この場は、終わりだね。」

「はい・・・」

声をかければ、いつもより強く抱き付いてくる体と、少しだけ速い鼓動を感じて、私もぎゅっと抱きしめ返した。

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