第3話 見た目の割には
とりあえずこの腹ペコロボット?をガソリンスタンドに連れて行くにあたり、普段は使用していないが大量にジャンクを運ぶときに重宝している荷車を取りに行き、載せようとした時であった。
「なぁ、お前結構重たいんじゃないか?」
そう。アシストボーンは日常から戦場までをモットーとしているため、一般家庭用であればせいぜい5〜10kg程度だが、軍用のものとなると重量も倍以上になる。
どうみてもコイツは一般家庭用のモデルではない見た目をしているので、安直にも軍用モデルなのではないか…と考えを巡らせていた。
『あのね〜キミ、これから運んでもらう身分だけど、あんまり重い重いって言ったらダメなんだぞ? 傷ついちゃうだろ?』
「ロボットなのに体重気にする必要あるか!?」
もうますますわからない…。やっぱり人間の人格を移植されてるのか?と思うほど発言がリアルなんだよなぁ…。
でもまだ不確定要素が多いため、とりあえずはガソリンスタンドに向かおう。そう思い、荷車をピッと指差して指示を仰いでみた。
「とりあえず荷車で運んでやるから、ここに載れるか?」
『え〜〜〜? それに載るのぉ? オイラすんごいロボットなのに、流石にその荷車は…w』
「バカかオメェは! お前がヘロヘロリン〜。とか言って動けないって言うから運んでやろうと思ったのに!」
「お前みたいなふざけたこと言うポンコツロボットは、この荷車で十分なんだよ!はよ載れ!!」
『そんなすごいケンマクで怒るなよな〜。まったくもう…。仕方がないからこの荷車で我慢してあげるけどさぁ、オイラのことポンコツ呼びしたのは覚えとくからな!!』
「こんのヤロ…ッ! さっさと載れ!」
『は〜。はいはい、わかりましたよーだ。』
コイツ…ッ!!! ロボットのくせになんて生意気なんだ! ロボット三原則知らないのか!?
何かと言動の角が立つロボット?が渋々荷車に『よっこいせ』とおっさん臭く載り、まるで狭い風呂に浸かってリラックスしてるかのような態度で『ふぅ〜〜〜』とか言っている。
あれだ。コイツの中身はあれだ、絶対おっさんの人格だ。何かの間違いで田舎もんのおっさんの人格が入り込んだに違いない。
『はい、載ったんであとはヨロシク〜!』
「お前、重たかったら置いていくからな。」
『えっ!? なんで!?』
「お前がもし軍用モデルだったらめちゃくちゃ重たいかもしれないからだよ!」
『いやだからさ〜。オイラをあのヒヨヒヨなアシストボーンと一緒にしないでおくれよな! もしキミが思うより重たかったとしても、それはオイラがそれだけ頑丈で強いロボットだということだよ!』
本当かぁ…? コイツがアシストボーンじゃなかったら、なんで人間が入れるような構造になっているんだ?とは言わなかった。なんか言ったらまたグチグチ言い出すかもだし。
「まぁ…とりあえず荷車持ち上げるから、マジで重たかったらガソスタに行くの考えるからな!?」
そう言って荷車のグリップ部分を強く握り、力んで上体を反らすぐらいまで持ち上げてみた…が。
ロボットが『グヘェ!』と言って荷車から放り出され、地面に突っ伏していた。
「待ってくれ。お前めちゃくちゃ軽くないか?」
思っていたよりかなり軽い。正直30〜50kgぐらい、下手したら100kg超えててもおかしくないような見た目だったので、めいいっぱい力を振り絞り持ち上げたのだが、そのせいでロボットが宙に浮いてしまった。
『おいーー! なんてことするんだいきなり!』
「ご、ごめんって…まさかこんな軽いとは思ってなかったからよ。」
『これでもし壊れたらどーするんだよ! もうこれあれだぞ! ガソリンは奢ってもらわなきゃ許さないぞ!!』
「いやでも、どこも壊れてなさそうだし、傷もついてないぞ。でも……」
『でも!? でもってなんだよ! なんだい、言ってみろよ!』
「でも…思ってたより軽かったから、それだけお前がポンコツで弱いロボットなのかな…とか思ってないぞ?w」
『ピギーーーーーーーーッ!!!!!』
コイツ…意外と面白いな。
豚が締め殺される時のような怒り声をあげているのを聞きながら、俺は笑うのを必死に堪えて荷車を押した。
ロボ魂! マキシマムスペック @maximumspec
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