第2話 電気なんて食えねぇよ
「おい、お前…目を回してる場合かよ!?」
『うー…ん…。』
うなるようにスピーカー?から声を出している得体の知れないコイツ。
でも本当に近くでよく見ると、白いボディフレームが人骨を想像させているのだということを知った。
仕組みとしてはまるでアシストボーンに近いような…。でもここまで人の身体に近い形のモデルって生産されてたか?
一人で色々コイツの各部を眺めていたら、目のモニターにパッと光が灯り、視線をこちらへ向けてきた。
『あ、あのー…。さっきオイラを見て爆走してたよね?』
やっぱりコイツ、自分で喋れるのか…?
独立して会話ができるアシストボーンなんて聞いたことないし、それにAI技術もそこまで発展してないだろ…?
『あのー? もしもーし! オイラの声聞こえてるー?』
「あっ、あぁ! 聞こえてるぞ。聞こえてるんだが…ちょっと処理が追い付かん。」
『なんだー。ちゃんと聞こえてるなら返事ぐらいしろよな~。で、もしかしてだけど、さっき派手にコケちゃったのを心配してくれたから、助けに来てくれたのか?』
「ま、まぁそんなとこだ…。それよりも、お前はいったい…」
コイツは一体何者なんだ? ポンコツ山で一体なにをしてたんだ? どうやって喋ってるんだ?
その疑問が尽きない中、スピーカーから電子音を出して会話をしてきた。
『オイラかい? オイラはね~…。オイラは……。んん? あれ?』
「なんだ? まさか記憶がないのか?」
『オイラ…っていう一人称と、自分がすんごいロボットだってことは覚えてるんだけど、自分の名前がわかんないね…。あれ? なんだっけ??』
嘘だろコイツ…!?
余計に混乱してきた。記憶がない上に謎の田舎モンの一人称。ますます怪しい。しかもロボット!? もうワケわからん。思考がAIだったとしても、そんなこだわりの強い一人称設定あるのか? いやあり得んだろ…。
『えーっと…。なにか大事なことをしようとしてて…。でもそれが思い出せなくって…。でも、すんごく今しないといけないことはわかってるんだよ。』
「今しないといけないことって…それは何なんだ?」
『お腹が空いてヘロヘロリンなんだよ…。満足に力もでない……』
「は、腹が減ったのか…? ロボットなのに腹減るのか!? あり得んだろ!??」
しまった。つい勢いでツッコんでしまった。
「動力源とかって…何なんだ? よくあるバッテリー駆動とか…。それなら電気自動車用のチャージスポットまでいけば…」
そう言うと、「こいつわかってねぇなぁ」みたいな目線をモニター越しに向けてきやがった。何様なんだコイツ…
『バッテリーなんて古いよ! 電気なんて食べても美味しくないじゃないか‼』
「いやでも、アシストボーンとかは基本電力稼働だろ? お前はアシストボーンじゃないのか?」
『アシストボーン? オイラをあんなヒョロいのと一緒にしないでおくれよ!』
そういうと目のモニターに斜め眉のような表示が出され、ちょっと怒っているような口ぶりで、胸のところをコンコンと指さしてアピールしてきた。
『オイラはすんごいロボットなんだぞ! なにがすごいって、世界初の小型エンジンを搭載したロボットなんだ! すごいだろ! だから、オイラのごはんは〝ガソリン〟なんだ! 電気よりも安く上がるし、すごいだろう?』
…マジかコイツ。今の社会情勢を…知るワケないか。記憶喪失?みたいだし。
「あのー。すごいロボットさんよ。口をはさんで悪いんだが……」
『なんだい? ようやくご飯を持ってきてくれる気になったのかい??』
「今、世界はガソリンの供給が少なくて原油価格がめちゃくちゃ上がってるんだが…」
『………へ?』
ぽつんとした目を表示してくるあたり、コイツの中ではホントに電気代よりもガソリン代のほうが高いって思ってるんだろうなぁ…。
『え、ちょ、ちょっと待っておくれよ。それじゃあガソリンは手に入らないのか!? オイラの、オイラのごはんはどうなるんだ!?』
「知らねーよ! まずお前がどんな奴なのか知らないし、目的も不明なロボットという情報しかないんだぞ!?」
『いやだから、今はお腹が空きすぎて思い出せないだけで、満腹になったら思い出すって!』
本当かぁ…?
さっきまでビビッて走って逃げてた相手だが、途端にポンコツ臭が漂いはじめた。
だが、このテクノロジーには目を見張るものがある。ロボットと言い張ってるが、もしかすると本当にアシストボーンの可能性もある。
新型機のテストにAIを搭載したいという企業の努力目標は噂で聞いたことあるが、もしかしたら自我が芽生えて脱出してきた…なんてこともなくはない気がする。
「本当に、ガソリンで腹一杯になったら、目的を思い出すんだな?」
『おうさ! 人間だってお腹空いてたら頭回らないことだってあるだろ? それと一緒だよ! オイラもお腹いっぱいになったら、頭の中もクリアになるよ!」
ところどころ人間臭い発言もあるが、SFでよく見る人格だけを機械に移したパターン…とかもあり得るのか?
あまりにもオタク的発想すぎるので自重するが、まぁここで知り合ったのもなにかの縁…なのかもな。ばあちゃん的に言うとそうなるか。
「まあ、腹空かしてるヤツを見捨てるほど鬼じゃねえからよ…。とりあえず、近場のガソスタにでも行くか。お前立てるか?」
『……お腹空き過ぎて立てません……えへ♡』
…………コイツゥ…!!!
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