(四)-4(了)

 ヴェロニカが大声で「待て!」と叫ぶ。

 その声をかき消すように隊員たちが一斉に発砲する。手すりに着弾し火花が散るが、そのときにはウジマの姿はもうない。

 ヨギョンが「クソっ」と悪態をつき、手すりの方へ駆けていく。次の瞬間に海に何かが落ちる音がした。ウジマが海に飛び込んだのか。

 味方全員が手すりのところにやってきた。メグも足を引きずってやってきた。ブリッジの構造物は船尾にある。皆で船尾の方を見た。船は海に細長い三角形の航跡を作っていた。ウジマが飛び込んだあたりは水泡ができていた。そしてその水泡はどんどんと遠ざかっていった。

 メグは初めての銃で撃たれた左のふとももの痛みをこらえながら、船が作る航跡と、遠ざかるウジマが作った水泡を見つめていた。


(了)

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航跡の水泡に消える 筑紫榛名@12/1文学フリマ東京え-36 @HarunaTsukushi

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