第15話 ルーティン
お次は毎朝の釣りだ。
実は、毎朝少しだけ、釣りをすることにしていた。
いつだって新鮮な魚を食べられるようにはじめたんだよね。
魚はインベントリに入れておけば腐らないし、食べ物はいくらあっても困らないからね。
それに毎日釣れるとは限らないし、蓄えはあったほうがいい。
だからこつこつ魚を釣ってはインベントリに貯めていた。
それに、今はまだ大丈夫だけど、この先冬になったら、どうなるかわからないしな。
この場所がどのくらい雪が降るかとかわからないけど、冬に備えて食料を備蓄しておいて、損することはないだろう。
ヴィルに釣りを手伝ってもらった。
二人で釣れば、釣果は二倍だ。
ヴィルはけっこう大き目の魚を釣り上げて、盛り上がった。
二人でお昼に食べようということになった。
それから、シャルへの餌やり。
シャルとの散歩と、運動。
シャルはヴィルに結構なついた。
シャルとヴィルと、いっしょに骨を投げて遊んだり、散歩して楽しんだ。
それから、毎日の資材集めにも付き合ってもらった。
実は、資材が枯渇しないように、毎日コツコツと集めてはいるんだよね。
あと、森の木を切り倒しまくったらなくなってしまうから、ちょくちょく新しく植えたりもしている。
木を切るとたまに種が落ちてくるのだ。
ヴィルに斧を手渡して、木材を集めてもらう。
あと、つるはしも渡して、採掘も手伝ってもらおう。
だが――。
「これで、木を切るんですか?」
「ええ、そうです」
「も、もしかして……サクラさんってご自分で木を切ったり、採掘されたりしているんですか……!?」
「え、そうですよ?」
「す、すごいですね……。前からすごい方だとは思ってましたけど……。大変じゃないですか?」
「簡単ですよ? こう、斧で木を何回か切ると……ほら」
――ポン!
私が斧で木を叩くと、木はいつものように、軽快な音とともに、原木ブロックに変化した。
その様子を見て、ヴィルはまた大きく口を開けて驚く。
「な……!? なんですか今のは……!?」
「なにって……木を切っただけですけど……」
「今軽く斧で叩いただけで、木が倒れたように見えたのですが……」
「普通はそうならないんですか……?」
「なりませんよ……」
どうやらこっちの世界で、普通に木を切り倒そうとすれば、現実と同じようにちゃんと相応の力をもって挑まなければならないようだ。
木を倒すのは木こりの仕事で、私のような素人がこんな簡単な斧だけで切り倒せるようなものじゃないらしい。
「信じられません……まるで魔法ですね……」
まあ、このゲームみたいな仕組みのおかげで、私はこうして一人でも森で生活できているのだけれど。
ちなみに、試しにヴィルにも斧を渡して、木を切ってもらおうとしたが、私のようにはならなかった。
ヴィルがやろうとすると、何回木を叩いても、木はブロック状にならずに、わずかに傷つくだけだった。
これでは木を倒そうとすると、かなり時間がかかってしまう。
この斧さえつかえば、誰でも簡単に伐採できるのかと思ったけど、違った。
どうやら私がやらないといけないみたいだ。
ゲーム的な機能を利用できるのは、あくまでプレイヤーだけなのかな。
とにかく、ヴィルに木を切ってもらうのはあきらめた。
「それに……この切り倒された木……これが不思議です。一瞬にして、切り揃えられたブロック状の木材に変化するなんて……。こんなの便利すぎますね……」
たしかに、木を切ったとたんにブロックになるのも、よく考えたら不思議なことだ。
その辺は私はゲームで慣れているから、あまり違和感を持たなかった。
「ええ、もっと便利なんですよ? このブロック、置くだけで建築もできちゃいますから。ほら」
私は試しに、目の前にさっきの木材ブロックを置いて、ちょっとした壁を作ってみせる。
その様子を見て、ヴィルはさらに驚いたふうに見せる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます