第12話 野菜のスープ

 

「ヴィルさん、お腹が空いていませんか? 野菜のスープを作ったんです。よかったら食べてください。私も今から、初めて食べるので、一緒に食べましょう。美味しいかわからないですけど……きっと美味しいですよ!」

「ありがとうございます。お腹、空いてます。いただきます」


 一緒にテーブルに座って、野菜のスープをいただく。

 うん、たしかに美味しい。

 クラフトで作った料理はどれも美味しいな。


「これは……! すごく美味しいです……! こんなに美味しい野菜スープは初めてかもしれない……。野菜の新鮮なうま味が出てますね……。サクラさんは、お料理が上手なんですね」

「あはは……ありがとうございます」


 まあ私は料理してないんですけどね……。

 全部クラフトがすごいのよ……。

 ヴィルは体力をかなり失っていたのか、あっというまにスープを飲み干した。

 ふと、ヴィルはポーションの空き瓶に目を落とした。


「これは……ポーションの空き瓶……もしかして、このポーションで助けてくださったのですか」

「そうです」

「それは……本当にありがとうございます。ポーションなんて高価なもの……」

「え……? ポーションって高価なんですか?」

「ええ、庶民にはなかなか手が届きません。たとえ下級回復ポーションだとしてもね……」

「そっかぁ……」


 私、その下級回復ポーションなら、薬草からいくらでも作れます……。

 

「って……これ……! もしかして神秘のポーションじゃないですか……!?」


 ヴィルは一本だけ余っていた神秘のポーションを手にとって、驚いた。

 神秘のポーションは少し飲ませるだけで効果があったので、半分ほど余っていたのだ。


「ええ。そうですよ」

「まさか……これも僕に使ってくださったんですか……!?」

「はい……」

「はぁ……なんてことだ……。神秘のポーションを使わせてしまったなんて……。本当に、なんとお礼を言えばいいのか……。こんな高価なものを……」

「え……神秘のポーションってそんなにすごいものなんですか?」


 まああの回復力からしても、貴重なんだってことはわかるけど……。


「当たり前ですよ! 神秘の薬草は栽培できませんからね。それに、神秘のポーションを作り出せるのも、宮廷錬金術師くらいなものですから。神秘のポーションは、貴族でも手に入れるのが難しい……。そんなものを僕なんかに……本当に、ありがとうございます」

「そんなにすごいものなんだ……」


 でもまあ、ヴィルがよくなってほんとによかったな。

 それに比べたら、神秘のポーションくらい安いものだ。


「家に帰ったら、かならずお礼をします。ところで……サクラさん、ここはいったいどこの街ですか?」

「……? 森の中ですよ……?」

「え…………? まさか、サクラさんは森の中に住んでいるんですか……!?」

「ええ、はい……」


 ノルンちゃんにも驚かれたな……。

 よほど珍しいことなのだろうか。

 まあ、夜とかモンスター出るもんな……。


「危なくないんですか……? その、夜とか……」

「ええまあ、でも罠も仕掛けてあるし、ゴーレムだっています。なのでとりあえずは大丈夫かと」

「そうですか……。サクラさんはすごいんですね。でも、ハングリーベアーにはくれぐれも気を付けてくださいよ? 僕が襲われたのも、奴ですから」

「ハングリーベア……」


 そういえばそんなモンスターまだ出会ったことないな。

 名前からして熊なんだろうか。

 てかこの森熊出るの!?

 熊とか普通に死ねるよな……?

 やばいな……。

 でも、ゴーレムいるから大丈夫だよね……?

 

「とりあえず、もう暗くなってきたんで、今日は泊っていってくださいね。またハングリーベアに襲われたらたまりませんから」

「はい……ありがとうございます。サクラさんのご家族の方にも挨拶したいのですが……」

「ん? 私は一人暮らしですよ?」

「え…………?」

「え…………?」

「森に一人暮らしなんですか……!?」

「ええ、そうです……」

「そ、そこに僕が泊ってもいいものなのでしょうか……?」

「え……?」


 ヴィルがなにを心配しているのかわからない。

 遠慮しなくてもいいのに。


「そ、その……若い女性の一人暮らしの家に……しかもここは人里離れた森の中……。僕みたいな若い男性がお邪魔していいものかと……」

「あ、ああ……そういうことね。まあ、大丈夫ですよ。ヴィルさんも怪我から回復したばっかだし、なにかしようってつもりもないでしょう?」

「ええ、そりゃあもう。命の恩人になにかするわけないじゃないですか」

「なら大丈夫ですよ」


 とはいったものの……。

 どうすんだこれ……!!!!

 正直家に男の人入れるのだって前世含めて初めてだよ!!!!

 しかもこんなイケメンが泊るだと……!?

 前世の私が見たら、憤死するな……。


 こういうとき、どうすればいいんだ……!?

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