第4話 その名は匠
いきなり家の壁が爆発して、瓦礫になった。
幸い、私たちが寝ているベッドとは反対側の壁だったので、怪我はない。
もしこっち側の壁だったら、私もメープルも死んでいたかもしれない……。
いったい、なにが起こったんだろうか。
寝てたらいきなり爆発するとか、物騒すぎる。
すると、爆発によって空いた穴から、モンスターが侵入してきた。
――ぴょんこ、ぴょんこ。
モンスターの見た目は、かわいらしいスライムのような見た目だった。
だが、普通のスライムと違って、真っ黒なつやつやした肉体をしている。
そしてその真っ黒でまん丸な身体の頂点から、導線のようなものが伸びている。
なんだかまるで、爆弾のような見た目……。
「は……!? 爆弾……!?」
もしかしてさっきの爆発は、こいつの仲間か……!?
私はとっさに鑑定をした。
◆爆弾スライム
体力 50
強さ ★×3
近づくと自爆死する
「やっぱ爆発するんじゃん……!」
すると、その爆弾スライムは、こちらへ近づいてきた。
近づくにつれて、爆弾スライムから伸びている導線が短くなっていっている。
そして、「シュー……」という物騒な音がきこえる。
やばい……爆発する……!
「逃げなきゃ……!」
とりあえず、ベッドだけは壊されたら困る……!
私は瞬時にベッドをインベントリにしまった。
そして、私はすぐさま、窓から外へ飛び出る。
メープルもぴょんと飛び越えてついてくる。
なんとか家の外に出たその瞬間だ――。
――ドカン!!!!
大きな音と共に、私の建てた豆腐ハウスは粉々に崩れ去った。
「ふえ~ん……!!!!」
涙目。ぴえん。
どうやら爆弾スライムはそれで全部のようで、それ以上は襲ってこなかった。
しかし……こんな厄介なモンスターがいたなんて……。
「どうしよう……一から作り直しだよぉ……」
あんな豆腐ハウスでも、最初に建てた家だからそれなりに愛着はあったんだけどな……。
うーん、さすがに今から建て直すのはめんどうだなぁ……。
今日は他のこともしたいし……。
「そうだ……!」
私はつるはしを取り出して、採掘場に向かった。
そして、採掘場の入り口付近を掘って、小さな部屋をつくる。
あとは、小部屋に扉をつけて、ベッドを置けば……。
「じゃーん、洞穴式簡易住居の完成です……! しかも採掘場と直通だから便利! まあ、見た目はよくないけどね……とりあえず今日はこれでいっか」
とりあえず、これで寝泊まりはできるから、今はこれでいいや。
もう少し時間に余裕ができたら、またちゃんとした家を建て直そう。
「うーんでも、また明日もあいつらが来たらこまるなぁ……。ゾンビも怖いし……」
ということで、まずは洞穴の入り口周りを、柵で防護しようということにした。
まずは柵をクラフトする。
◆木の柵
必要素材
・木の棒×10
完成した柵を、洞穴の入り口を囲むようにして設置する。
これで、爆弾スライムがやってきても、壊されるのは柵だけで済むはずだ。
それから、これから昼間にもモンスターと遭遇するかもしれない。
護身用に、剣を作っておこう。
◆鉄の剣
必要素材
・鉄インゴット×3
・木の棒×1
「じゃーん、鉄の剣完成だよー!」
攻撃力は★×4って書いてあった。
爆弾スライムの強さが★×3だから、それよりは強いのかな。
よし、鉄の剣を装備して……っと。
これでなにかあっても安心だね。
さてと、それじゃあ今日はなにをしようかな。
そうだ、昨日コームギを収穫した際に、コームギの種を手に入れてたんだ。
いちいちコームギを探しにいってもいいけど、やっぱり栽培できたらそれが一番いいもんね。
今日はこの種を植えてみることにしよう。
作物を植えるには、まずクワで土を耕すみたいだ。
まずはクワをクラフトしよう。
◆鉄のクワ
必要素材
・鉄インゴット×2
・木の棒×1
鉄のクワが完成したので、家の近くの土を耕してみる。
「えい……! ほっ……!」
よし、いい感じ。
土の色が変わった。
そこに種を植えてみる。
すると、なにやら軽快なエフェクトが出た。
種を植えることに成功したようだ。
あとは育つのを待つだけ……なのかな……?
「水とかあげたほうがいいよね……?」
クラフトレシピに、じょうろがあったので、それを作ってみる。
◆じょうろ
必要素材
・鉄インゴット×3
さっそく川で水を汲んできて、種を植えたところに水をやる。
よし、なんかキラキラしたエフェクトが出たから、これでいいっぽい。
あとは毎日水やりして、育つのを待とう。
そうそう、忘れてたけど、トイレも作っておこう。
トイレをクラフトするには、スライムボールが必要みたいだ。
スライムボールって、たぶんスライムからのドロップアイテムだよね?
「よし、剣の試し切りもかねて、スライムには尊い犠牲になってもらおうか」
スライムにはなんの罪もないけど。
私は森のなかをしばらく歩いて、スライムちゃんを探した。
スライム可愛いから、殺すのは気が引けるけど、これも快適な生活のためだ。
まずは鑑定で様子見。
◆スライム
体力 20
強さ ★×1
汚水や汚物を浄化する
「うん、これなら勝てるな」
私は剣を装備して、スライムに斬りかかった。
「おりゃ!」
「ぴきー!」
――ズバ!
あっという間にスライムを倒したぞ。
やっぱスライムって雑魚モンスターなんだな……。
一匹目からはドロップしなかったので、あと何匹か探して倒す。
しばらくスライムを狩って、スライムボールを計5個手に入れた。
「よし、これで水洗トイレが作れる!」
◆水洗トイレ
必要素材
・スライムボール×3
・鉄インゴット×2
トイレが完成したので、部屋の中をさらに掘り進んで、もう一個小部屋を作り、そこに設置する。
よし、これで快適ライフ!
そのうちお風呂も欲しいよね……。
だけど、それは後回し。
そろそろ鉄が足りなくなってきたなぁ……。
ちょっとまた鉱山夫になるか。
私は部屋の反対側の扉を開けて、採掘場へとやってきた。
「うりゃりゃりゃああああ!」
私は一心不乱につるはしを振り続け、しばらくの間採掘に励んだ。
「お……!? こりゃなんだ……!?
しばらく掘っていると、今までにみたことのない鉱石を発見した。
掘ってインベントリに入れてみる。
すると、「銅鉱石」と書かれていた。
「おお……! 銅か……! なにに使えるのかはよくわからんけど、これはいいね! 新しい鉱石! とりあえず集めておこうっと」
それからもしばらく掘り続け、最終的に鉄鉱石50個、銅鉱石10個、石炭100個、石ブロック500個ほどが手に入った。
そろそろこんなもんでいいだろう。
私は堀り進んできた階段を引き返して、部屋へと戻る。
「う……重い……」
階段をのぼっていくけど、来た時よりも明らかに身体が重い。
インベントリの中身がいっぱいになると、重くなるのか……?
それに、ずっと採掘してたから身体の疲労もあるのかもしれない。
えっちらおっちら身体を引きずりながら歩いて、私はようやく部屋まで戻ってくる。
「これは……そろそろ収納ボックスが必要だな」
インベントリに持ちきれなくなったアイテムは、収納ボックスに入れればいいことに気づいた。
もっとはやく作っておくべきだった。
いや、それだと爆弾スライムに収納ボックスごと爆発させられてたかもだから、今がちょうどいいタイミングかもしれない。
とにかく、私は収納ボックスを2つほどクラフトした。
◆収納ボックス
必要素材
・木材ブロック×10
収納ボックスを部屋に置くと、また一気に生活感が増した。
家具を置くと部屋が一気にいい感じになるね。
さっそく今手に入れてきた鉱石たちを、収納ボックスにしまう。
うん、身体がかなり軽くなったよ~。
ふと、外を見ると、もう外は暗くなっていた。
今から釣りにいくのは無理だから、昨日のパンの余りを食べて寝るか。
私はそうそうにベッドの中に入った。
もちろんメープルも一緒だ。
「ふぅ……今日はたくさん採掘して身体を動かしたから、すぐ眠れるぞ」
私はあっという間に眠りについた。
そして早朝――。
私は、あの忌々しい「シュ~……」という爆弾の音で目が覚める。
まさか……また奴か……!?
望んでもいないのに、家を爆破して勝手にリフォームしてくる、あの――。
「きゃああああああああああ!!!? こないでこないでこないでえええええ! なんでええええ!? 柵作っておいたはずなのにいいいいいい!!!?」
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