第3話 もふもふってやつか


「メェ~♪」


 森から現れた謎の羊は、いきなり私に飛びついてきた。

 頭をぐりぐり、私のお腹にこすりつける。

 なんか、懐かれてる……?


 いきなりで驚いたけど、なんかもふもふしてて可愛い。

 リアルな感じの羊じゃなくて、デフォルメされた可愛い感じの小さい羊だ。

 私は羊のもこもこを撫でた。


「よしよ~し」

「メェー♪」


 なんか喜んでるみたいだ。

 もこもこしていて、顔を近づけると気持ちいい。

 そういえば、メニュー画面にテイムっていう項目があったな。


「羊、テイムしてみるか……」


 私はメニュー画面を開いて、テイムを選択。

 そして目の前の羊ちゃんに向かって、テイムを発動させた。

 すると――。


【メークル×1 のテイムに成功!】


 とメッセージが表示されて、メークルが仲間になった。

 どうやらゲーム内では羊ではなくメークルという種類の動物らしい。


「やった……!」


 さっそく名前を付けよう。

 メークルだから、メープルでいいか。


「これからよろしくね? メープル」

「メェーーーーー!」


 この世界にきて初めての仲間だ。

 大事にしよう。

 羊って、放し飼いでいいのかな?

 たぶんその辺の草とか食べてくれるだろう。

 

「あ……! そうだ! 羊といえば、羊毛!」


 私は、ベッドのクラフト素材に羊毛が必要だったことを思い出した。

 朝になったら羊毛をとりにいこうと思ってたけど、まさかカモの方からネギを背負ってくるとは……いや、カモじゃなくて羊だけど……。


 あ、でも羊毛をとるには、ハサミが必要みたいだ。

 ハサミを作るには、鉄が必要……。

 鉄ってどこでとれるんだろう……?


 私はピッケルをもって、昨日、石を採掘したところに行ってみる。

 石を削ったところから、少しだけ鉄鉱石が露出しているのが見えた。


「お……! さっそく鉄発見! ここを私の採掘場としよう」


 さっそく鉄を掘ってみる。

 鉄鉱石は鉄鉱石ブロック×1としてインベントリに収納された。


「せっかくだから、もうちょっと深くまで掘ってみよう」


 もっと地下にいけば、他にもいろんな鉱石が手に入るかもしれない。

 石ブロックや鉄鉱石を掘り出すと、その部分はブロック状になって凹む。

 なので、階段状になるように、地面を掘り進めていく。

 こうしておけば、地下から地上に戻るときもスムーズだ。


 深く掘っていくと、だんだん周りが暗くなって、よく見えなくなってくる。

 私は松明を設置しながら、どんどん深くまで掘り進んでいった。

 しばらく掘って、いろんなものが手に入った。


「やったぁ……!」


 石炭×50、石ブロック×200、鉄鉱石×20が手に入った。

 さっそく、これを家に持って帰ろう。

 家に帰って、さっそく鉄鉱石を鉄インゴットに製錬する。

 かまどに鉄鉱石を入れておくと、ものの数分で鉄インゴットになった。


「これでハサミが作れるね~」


 

 ◆ハサミ

 必要素材

  ・鉄インゴット×3



「できた!」


 さっそく、メープルから羊毛をとらせてもらおう。

 私はメープルを怖がらせないように、ゆっくりと近づいた。


「大丈夫だよ~痛くしないからね~力を抜いて~」

「メェ~? ……メェへへへへへへ!!?!?」」

「よし、もう大丈夫!」


 私はメープルから羊毛×3を手に入れた。

 これからも、また生え変わったらとらせてもらおう。

 これでようやくベッドが作れるね。



 ◆ベッド

 必要素材

  ・木材ブロック×3

  ・羊毛×3



「えい!」


 私はさっそくベッドをクラフトして、それを部屋に置いた。

 うん、豆腐ハウスでも、ベッドができると一気に生活感が出るな……。

 私はさっそくベッドの上にダイブして、寝転んだ。

 ぽんぽん跳ねても大丈夫。

 ふかふかもふもふのベッドだ。


「うわ~これだよこれ~。これこそ文明。人間の生活にはやっぱりベッドは必要だね。これで今夜からぐっすり眠れそう」

「メェ~♪」


 なんだかメープルも誇らしそうだ。

 

「うんうん、メープルのおかげだよ~」

 

 でもまだまだ寝るには早いな。

 お腹が空いたし、なにか食べたいけど……。

 魚は昨日食べたしな、他のものが食べたい。


 なにか食べ物をクラフトできないだろうかと、私はクラフトメニューを開いて、レシピをいろいろ見てみた。

 すると、よさそうなのがあった。



 ◆パン

 必要素材

  ・コームギ×3



「これなら、コームギをとってくれば作れそう!」


 コームギってどんな植物なのかなって思うけど、たぶん小麦に似た植物なんだろうな……。

 でも、どこに生えてるんだろう?

 森の中のどこかには生えていそうだけど……。

 すると、メープルがいきなり鳴きだした。


「メー! メー! メー!」

「ん? メープル、どうしたの?」


 そしてメープルはいきなり走り出した。

 家を飛びでて、森の中へ入っていく。


「あ、ちょっと待って! メープル! どこいくのー!?」


 私は急いでメープルを追いかける。

 しばらく走ると、背の高い植物が生えているところに出た。

 メープルは必死になにかを伝えようとしてくれている。

 メープルはその植物を一つ口で千切ると、私のもとへもってきた。


「え……? これ……? もしかしてこれがコームギ?」

「メェ~」


 インベントリに収納すると、たしかにそれはコームギだった。

 なるほど、この植物がコームギか。

 よかった、ちゃんと森の中に生えてたよ~。


 私はいくつか背の伸びきったコームギを収穫して、その場を後にした。

 コームギを収穫すると、いくつかコームギの種もドロップした。

 もしかしたら、これを植えたらコームギを栽培できるかもしれない。

 あとで家の近くに植えてみよう。


 家に戻って、さっそくパンをクラフトしてみる。


「えい……! できた……!」


 簡単に、一瞬でパンを作ることができた。

 現実だったらいちいち生地をこねて、焼いてってしないといけないのに、クラフトってすごい。

 焼きたてほかほかの美味しそうなパンが完成した。


「美味しそう……さっそく食べよう……!」


 私はパンを半分にして、それを口に放り込んだ。

 もぐもぐ。


「うん、美味しい……! まあ、欲を言えばジャムとか牛乳とかほしいけどね……」


 そしてもう半分は、メープルにあげてみる。

 羊って、パンとか食べるのだろうか?

 まあ、もとがコームギだから、食べるよね?

 すると、メープルはおいしそうにパンを平らげた。


「メェ~♪」

「おいしい? よかった。これはメープルのおかげで手に入ったからね。ありがとねー」

「メェ」


 まだ食べ足りないな……。

 そうだ、これ、パンに魚とか挟んだらもっと美味いんじゃないか……?

 私はさっそく、釣り場へ直行した。


 夕方になって、魚を釣り上げて戻ってくる。

 今日の釣果は2匹だ。

 さっそく魚を焼いて、パンにはさんでみる。


「できた……! オオアージドッグ!」


 さっそくそれを口の中に放り込む。

 もぐもぐ。


「うーん♡ おいしい~!」


 これならしばらくは飽きずに食べられそうだ。

 森での生活も悪くない。

 なんだかこういうのんびりした生活って、最高だな。

 前みたいに、時間に追われることがない。


 メープルっていう新しい仲間も増えたし、このままうまくやっていけそう。

 今日は満足な一日だったな。

 さてお腹も膨らんだし、夜は暗くてなにもできないし、そろそろ寝るか。


 今夜は作ったばかりのふかふかベッドもあることだしね。

 これもメープルのおかげだよ~。

 私はメープルを抱きしめながら、布団に潜り込んだ。

 布団もメープルももふもふふかふかで、あったかくて気持ちいい。


「おやすみ~メープル」

「メェ……」


 私はあっというまに夢心地。

 すぐに眠くなった。


 だが、早朝過ぎに事件は起こった――。


 いきなり、大きな音と共に……



 家の壁が爆発した。


 

 ――ジュ~……ボン!

 ――ドカ―――――ン!!!!

 


 私は怒りと驚きに任せて飛び起きた。


 

「はああああああああああああ!?!!??!」

 

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