第10話 クズ、色々と露骨すぎてビビる
分かれ道まで戻ってきて倉庫とやらチェック。
よくわからない聖遺物や硬貨、武器や防具にアクセサリーと、高級感のあるインテリアからボロいちゃぶ台まで雑然と置かれていた。慰謝料代わりに全部没収しておこう。
魔空には
適度な広さのホームには、インテリアを適当に置いて、主にアンジェが使用する感じだ。
『ふかふかぁ……』
天蓋付きのベッドに寝そべり、ごろごろしているアンジェ。
なんか気持ちよさそうだったから、
『気持ちいいですね、シェイド』
『あ、ああ……』
短時間で起きたアンジェの変化よ。
見るからに肌艶が良くなって、白銀の髪もさらっさらのふわっふわに。
ガリガリガンジーだった体が、プリプリプリンに成長しつつある。
何も食べていないのに解せぬ。
『シェイドのおかげです』
俺は倉庫の影にいた生き残りの魔影を回収しただけだ。
魔素が濃くなることで、アンジェにも恩恵があるとはいえ、この成長速度はヤバない!?
元々顔の好みはストライク、このまま順調に発育すると俺の好みに合致してしまう。
これは危険な兆候だ。仮にアンジェが俺に心を許しても、俺は油断しないぞ。
人間なんていつか裏切る生き物だ。ただ裏切るの間、一緒に行動するなら好みの奴がいい……あれ?
『だあぁぁ……思えばシェイドは果報すぎる。慎まねばならん。慎まねばならん』
自分への戒めとして、某歴史漫画に登場する仁君の言葉を借りてみた。
『それは……〝よこやまみつてる三国志〟の登場人物の言葉です?』
〝魔影の記憶〟に三国志あるのかよっ!? というか小説〝よしかわ〟三国志でなくて、漫画家の作品が出てくるということは、やっぱり……認めたくないが俺の記憶、取り込まれている!
『アンジェ、くれぐれも〝18禁〟とか〝R18〟の漫画とか動画は調べちゃだめだぞ』
子どもにはまだ早いし、俺の性癖がプロファイリングされると主導権を奪われるかもしれない。
『えっあ、あれ……は、はぃ』
おい、顔が赤いぞアンジェ。
『……ふいっ』
おい目をそらすんじゃない……こいつ、既に読んじゃいないか?
『まあ、ほどほどにしろよ。それにしても部屋らしくなってきたな……』
室内には壁掛け松明、魔空の天井辺りに聖遺物〝
魔空の床には、食い残した聖布をカーペット代わりに敷いて、そのうえにボロいちゃぶ台をセット。
水回り関連は〝水聖霊の涙〟を使いまくる。そんなに価値のある物じゃなかったのか、いくつか見つけたので、収容所……ゲストルームにも水場を作ってやった。人間もゴブリンも水場を中心に拠点を作り出したから、彼らの戦いは長く続きそうだ。
『……で、この〝木々の恵み〟という謎の種が無限に沸く聖遺物。使えるのか?』
『わかりません。そもそも魔空の床って、種を埋めたりできるのでしょうか』
『さあ? ただ俺の感覚としては魔空って魔影の中にある別次元の空間なんだよな。影の中の空間に近い感じか』
ということで、大丈夫な気がするので、種を床に埋めてみる。
――ッ!? なんか吸われたんだが……魔素か、俺の魔素を吸ったのか。
転生したての魔影だったら、
床に埋まった種は、数秒で発芽し、茎や葉が伸びて、赤黒い小花が咲いた。
『雑草のなかで時々見かけるよくわからない小花、で色がグロい』
で、グロい小花が枯れて、まん丸とした果実が床に落ちた。体感1、2分といったところか。
『これ、ダイコーンです』
『大根……根菜なのに、
というか、これも俺の記憶かイメージが思いっきり反映してるんじゃねえか。
だって、真ん中に切れ目があってぱかっと割れるとか自然の植物じゃないだろ。
『これ、いいのか。その、色んな意味で許容できないような……』
考えたら負けっ! 割れた中身が食パンだったとしても、考えるな!!
『あ、このパン柔らかい……おいひいです』
『そうか、アンジェ……よくノータイムで食えるなソレ』
毒見はしてもらう予定だったけど、もう少し躊躇するかと思ったわ。ハムハムとマイペースに口に入れては、幸せそうな表情を浮かべる。やっぱり腹は減ってたのか。
『空腹も限界突破すると慣れるというし、とにかく食えるんなら良かったよ。俺も食ってみるか、感覚を戻して……うまっ!? ただのパン、いや生でもいける高い食パンの味だぞっ!』
原理原則、時空次元に権利関係ひっくるめて超えてはいけない壁を貫いたような気がする。
ドラえもソの大長編で見た秘密道具そっくりなんだが。大根かカブだか忘れたけど色んな意味でヤバない!?
『なんて危険な道具、いや聖遺物なんだよ』
無賃乗車するなら終点まで、ありがたく使わせてもらうぜ。
よし、次はこんがり焼けたトーストにバニラを乗っけてはちみつかけた奴、出てこいやっ! ……どうやるんだこれ、生食パンしか出ないぞ?
『よし、畑を設置したから検証は任せた。今の俺なら消費する魔素も大したことはないし、アンジェの食料問題はこれで解決だな』
謎の種は、割れたダイコーンの中にいくつか落ちていた。種不足にはならないようだ。
魔素だけで成長する、魔影の俺も、人間のアンジェも、ついでに種も。
ただ、生食パンの味を知ったアンジェも、これから魔素だけ生活は物足りないだろう。
◆
牢屋、倉庫の探索も終え、ホームも落ち着いたところで探索再開。
通路を進むと、
「なんだこるぁぁぁ――」
「ギャハハハ、なんだよ、魔影ごときがぁぁぁ――」
「なんだてめぇはぁぁぁああ――」
とまあ、俺のことを舐め腐っているゴブリンたち。
問答無用で次々ともうゲストルームに魔空していく。
『『『新手が来たぞぉー! 殺せえ!!』』』
ゴブ・即・殺! とばかりに、人間たちは一致団結してゴブリンたちと戦っている。
人間は集団になると本当に厄介になるよな。拾ってきた武器防具で装備を固め、水場の近くに置いたパンで満腹度を回復するしぶとい奴らだ。
俺を馬鹿にした者同士、死ぬまで醜く争い続けてくれ。
通路には、俺の同胞の欠片が増えてきた。ゴブリンの
『おっと団体客が増えてきたな。さすがにゴブリン陣営も異常に気付いたか』
向こうから走ってくるゴブリンが2匹、おっと魔影の欠片見っけ、さらに奥からゴブリンが3匹、いや少し遅い奴もご案内。で、魔影の欠片発見! またゴブリン、こっちもゴブリン、ついでにゴブリン「グラァ――」でまたゴブリン、魔影の欠片、ゴブリンゴブリン順調順調……ん? いつもよりデカい個体がいたような? まあいいか。
『うぉおおおお!』
ゴブリンとの終わらない戦いのおかげか、人間たちは少数精鋭で奮闘している。非戦闘員っぽい奴も、拠点の整備やアイテム拾いで活躍中。なお、魔素耐性がついたからか弱っている奴はいない。
『階段発見! あれ……思ったより近くにあるな』
覚醒してすぐのときは気が動転してたせいか、階段も小部屋もない真っ直ぐの長い通路と思い込んでいた。ちなみに、小部屋の壺は全部破壊、タンスと本棚の中身は勇者の
部屋の中身は、ゴブリン数匹、ボロ装備やガラクタ、ゴブリンの使用済みベッド、腐ってそうな食い物と酒が少々。うん、ゴミしかないっ!
『えっと……ここに上り階段。ということは地下かな』
アンジェがお手製地図に階段マークを書き込んだあとに呟く。
確かに下り階段はない、さらに外から入る光もなければ窓もない。
『地下何階とかだったら大変だな……』
移動方法を考えないと。ダミーが通路を転がると目立つし、ゴブリンが近づくたびに影に入るのも面倒だから魔空送りを続けているが、この先にゴブリン以上の強敵がいるかもしれない。
俺は打ったら下がるヒット&アウェイじゃなくて、煽ったら逃げるウエ~イ&アウェイが基本スタイルだ。
俺より弱い奴に会いに行きたい。
『……あれ? ダミーって敵を煽るだけじゃね!?』
『急にどうしたんですか?』
俺、
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