【おまけ】姫と宰相のその後
白を作る為、物語を紡ぐ
ライアスの仮面を胸に抱いたまま彼に抱き上げられ、フィリオーネは礼拝堂から外に出る。中に入れなかった王宮内の面々が、二人の登場を待っていた。
笑顔に見送られながら馬車に乗る。次はパレードである。今回はライアスと共にフロートへ上がるのだ。
馬車という名の密室に落ち着いたフィリオーネは、ライアスに顔を向ける。
「ライアス」
「……言いたいことは、たくさんあるとおも――」
「あなた、エアフォルクブルク帝国からの内政干渉だと批判されたり糾弾されたりする心の準備はできていて?」
「は?」
ライアスの言葉を封じてまでフィリオーネが口にしたのは、真面目な話題だった。一般市民は気にしないかもしれないが、ライアスの手腕を認めていた人間含めた王宮内で働く人間からすれば、自国の人間だと思っていた人物が帝国の皇子だったと知れば、そう考えてしまう者だっているだろう。
「どう対応するつもりだったの?」
「私が通した法案などは全てエアフォルクブルク帝国に関係ないものばかりだから、問題ないと考えていた」
ライアスらしいが、甘い。フィリオーネはそう思う。
「すべての人間がその考えに行きつくとでも?」
「……行きつかない?」
「…………頭のいい人は、頭が悪いわね。もっと、簡単で分かりやすくするべきよ」
ライアスのことは、フィリオーネの中で複雑だった。素直に「ああ良かった」と思えないでいる。しかし、フィリオーネは夫が糾弾されるのを予測しておきながら眺めているような冷血漢ではない。
「フィリオーネに言われると、反論できないな」
苦笑しながら言うライアスは本調子ではなさそうだ。きっと、馬車の中でフィリオーネに詰め寄られることを覚悟していたのだろう。それが、こんな話題になり困惑しているのだ。
フィリオーネだって、本当はライアスから話を聞きたかった。どうしてこんなことになっていたのか、聞き出したかった。しかし、二人きりで過ごせるのは今の内だけで、宴会が始まってしまえば内緒話はできなくなってしまう。打ち合わせをするなら、今しかない。
良くも悪くも、フィリオーネは王族としての思考の方が私人としての思考に勝っていた。
「安心して。国王が黒と言えば黒なの。だから、次期女王である私があなたを白にしてあげる。でも、根拠に欠ける話は通用しないから、物語を作るわ」
フィリオーネは笑みを作り、ライアスと“誰もが羨むような夢物語”の打ち合わせをするのだった。
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