第12話 怪談:はいきょ

廃墟には怖い話がつき物。

俺はその話の尻尾を捕まえに来た。

俺はただの一般人だ。

興味本位でやってきただけで、

別段、取材とかそういうわけじゃない。

怖かったとか、変な場所だったとか。

そういうのを話題にできればいいだけで、

繰り返すけれど、興味本位だ。


俺は適当に廃墟に入り込んで、

うろうろうろついて、帰る。

深入りはしない。

たいていそのスタイルだし、

危ない目にあったのは、

どっちかと言うとガラスだったり釘だったり。

廃墟をなめてかかっているものだから、

そういう危ない目にはちょくちょく。

でも、懲りないのも俺だ。


うちすてられた場所はいい。

なんというか、人が溶けた場所のような気がする。

そこにいたはずの人々が、

当然本来はどこかに引っ越したりなんだりだけど、

俺は廃墟に、人が溶けた気がする。

そういう場所が大好きなんだ。

だから、不可解な怖い話がついてまわるのも、

すごく納得いくんだ。


さて、今日も今日とて、人の溶けたような廃墟を求めて、

俺はどこかの廃墟にやってきた。

ネットはいいね。近くに廃墟の情報があれば検索で一発だ。

で、廃墟をなめてかかる俺は、また、うろうろとする。

へぇ、でかい廃墟。

まずは周りをうろうろ。

ふっと泳がせた視界の端に、誰かがいた。

幽霊かな、浮浪者かな。

ぐるりとあたりを見ると、廃墟の中に、また、人影が一瞬。

どこかで水音が聞こえた気がした。

配管でも壊れてるのかな。


俺は無視してとりあえず歩く。

さて、どこに向かえばいいのかな。

俺は深入りはしない性質なんだ。

廃墟をちょっと冷やかして、それで帰ればいいんだ。

さて、人影がまたいたぞ、俺はそんなものは追わないんだ。

さて、どこに向かえばいいのかな。

水音はどこからするんだろう。

釘やガラスに気をつけなくちゃな。

俺は懲りない性格なんだ。


人の溶けたような廃墟。

そんなものどこにあるんだろうな。


俺はべちゃべちゃと歩く。

浮浪者とかには気をつけないとな。

でも俺は懲りない性格でさ。

廃墟はいいね。

人が溶けているみたいだ。

溶けかけた人がいるじゃないか。

なんだ、幽霊じゃないのか、面白くないな。

さて、どこに向かえばいいのかな。


俺はべちゃべちゃと歩く。

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