第6話 怪談:てがみ
あなたに宛てて。
手紙が届いた。
至って普通の郵便物に、
私の名前が宛先としてあって、
うっかり者の私は、それを開けた。
よくよく考えれば、差出人を見ればよかったのだ。
本当にうっかりしていた。
『突然の手紙ですけれど』
そんな書き出しで、
ああ、不幸の手紙か?と、思った。
手紙は続ける。
『うまく言葉に出来ませんけれど』
『いつもあなたのことを思っています』
『恋愛とかでなく、心配とも少し違って』
『あなたが心地よければいいと思います』
『あなたに、幸運をおくります』
『では』
手紙はそれで結ばれ、
何があるかと思えば、宝くじがぺらりと一枚挟まっていた。
差出人は、書いていなかった。
いよいよ不気味ではあった。
けれど、宝くじはちゃっかりいただいた。
結論からいって、
宝くじは当たった。
高額ではないのだけど。
私はお礼の手紙出せないまま、
次の手紙がやってきた。
手紙は言う、あなたが心地いいようにと、
そして、手紙は恋人を紹介した。
とてもいい異性で、私たちはすぐさま恋に落ちた。
私は心地いい生活を手に入れた。
全てが満たされたわけではないけれど、
それなりに心地がいい。
手紙はそれからも、ぽつぽつ届いた。
私は一つ一つ目を通しては、手紙をひとまとめにしていった。
私を作ってくれた手紙だ、
ぞんざいにしてはいけない。
そうして、私は気がついた。
手紙に、私は好意を抱いている。
私は恋人とは別に、手紙が大好きになった。
私を作り上げてくれた、手紙が、とても、
返事はどこに出せばいいだろう。
いつも悩んでいた。
便箋に手紙への返事を書いた。
ありがとうを精一杯こめた。
行き場をなくした返事を、とりあえず郵便受けに託した。
次の日、手紙が届いた。
手紙には、涙のあとがたくさんと、
あなたの言葉が嬉しかったと言う旨が記されていて、
あなたが、一介の郵便屋に、
郵便屋さんありがとうと言ってくれたのが、嬉しかったと。
これからもあなたに、手紙を届けます。
手紙のご用命は、あなたの後ろに。
お手紙さんたら、あなたを食べた。
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