オワッタ〜…〇〇が

アオヤ

第1話 オワッタ〜…〇〇が

 俺はいつもの様に、夕食後シンクの前に立ち食器を洗い始めた。


「食事を作ったのは私なんだからアナタが食器を洗うのは当たり前でしょう? 私はメシタキババアじゃ無いからね! 」

鬼嫁は我が家の家訓みたいに俺に向かってソレを毎日唱えている。

メシタキババアで無いならばどんなババアなんだ?

なんてもし聞いたら30分位は針のむしろに座らされる事になるだろう。

そして鬼嫁が食べ終わった食器をボンと置いて行ってしまった。

シンクの中にはフライパンや鍋、お皿やお椀が積重なる様に置かれていく。

俺はどれから洗おうか少し悩んでいると…


「ほら、乾いた食器が後ろのカゴに入っているからソレを食器棚に移して! 」

鬼のひと声が遠くからとんでくる。

そのひと声に従って俺は食器を仕舞っているつもりだった。

「違う! その食器はそこじゃ無い。薄い皿向こうの棚でお椀はこっちの棚」

鬼嫁はリビングに居ながらにして俺に顎で指示している。


 「フライパンや皿に着いた油はキッチンペーパーでよく拭き取ってから洗い始めてね。それからギトギトが残る事があるからお湯を使ってちょうだい」

鬼嫁の身体はその場から動いていないのに口だけはよく動くものだと感心してしまう。


 以前、子供の家族を交えたパーティーがあった。

そして会食後、何も言われて無いのに俺はみんなの食器を一生懸命洗い始めたら…

どこからかヒソヒソばなしが聞こえだした。

「アナタ旦那さんの事よく躾してるわね」

決して俺の事を良く言って無い事だけは確かだった。

「えッ? あれくらいじゃ躾と呼べないでしょう? 」

と鬼嫁はバッサリ言い放った。

洗いものしながら俺は『躾なんてペットじゃあるまいし』と思っていた。

でも、リビングでスマホ片手に顎で俺を指図する鬼嫁は俺の事を便利なペットだと思っているに違いない。


 シンクの山積みされた食器も大分片づいてきた。

後はすすいで水切りカゴに移すだけだ。

もう少し…


「ふぅ~オワッタ〜  …〇〇じんせいが! 」

ツイ口をついて出てしまった。

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オワッタ〜…〇〇が アオヤ @aoyashou

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