第3話 京都大学に入学して
小さい頃からのその習慣が功を奏したのか、いわゆる「一流大学」と言われる京都大学に合格しました。志望校だったので、心から嬉しかったです。
喜びの中、晴れて京大生になりました。
京大生になった時、周りからひたすらチヤホヤされる日々が続きました。
高校の友達、中学の友達。
お世話になった先生。
離れて暮らす親戚。
その時いくら自信のない私でも否定できないほど、褒められることに「心地よい」と感じました。
自尊心は、満たされました。
けれどそれも、ほんの一時的なものだったんです。
「京大生だからできるよね」
「賢いから大丈夫」
「就活だって簡単じゃん」
「書類で落ちたことないでしょ」
大学四年間、他人から浴びせられた言葉は、ほとんど同じだった気がします。
特に初対面の人だったり他大学の子だったりする人たちに、似たような反応をされました。
自己紹介の時、最初は皆びっくりします。
それがプラスの意味でなら良いですが、「京大生なんて自分と別次元の生き物だ」という目に見られることも少なくはなかったのです。
考えすぎだ、と言われたらそうかもしません。
でも、私の中では他大学の人や、たまたま訪れた美容室の美容師にはっきりと分かるほど「引かれる」のを感じると、私の身体はスンと固くなりました。
大学で出会った同期の友人たちが皆、何かと特技があって、輝いて見えました。
時間をかけずにレポートを書ける人。
音楽に命をかけている人。
世界一周の旅に出る人。
授業を適当に受けて、サボることも多いのに、しっかりと単位をとる要領の良い人たちを、たくさん見てきました。
対して私は、授業をサボると話についていけなくなるし、レポートも前日の夜中に仕上げる根性なんてないし、テスト対策も万全にしなければ成績を保てない、要領の悪い女でした。
同大学の輝く人たちを見る度に、どんどん自信をなくしてゆきました。
もう、誰にも自分が京大生だなんて名乗りたくないと思うほどに、自分が出来損ないだと思っていました。
勉強も、高校生の頃から記憶が薄れてゆき、一般教養の知識が剥がれ落ちていきます。
それならばまた復習すれば済むことなのですが、大学では大学でやらなければならない勉強があったので、そちらにシフトせざるを得ません。
京大生だからできるよね。
いつしかプレッシャーになっていた自分の学歴を、投げ捨ててしまいたいと、何度も思いました。
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