第4話 崩れた支配



「ん~部屋に籠るのが飽きたとは言ったけど…」

 ルアーナが周りを恨めしそうに見る。

「監禁は話が違うじゃなぁぁぁぁぁい!!!!」

 叫び、ハァハァ、と疲れたように胸を抑える。


「ハァー、しかしあの変態共も考えたものね。まぁ、貴族の言ってることなんて、半分も理解できないけど。

 でも、あいつら来ないわね?すぐにでも手篭めにしようと襲いかかってくるとばかり…」


 カツッ!

 地下の牢屋で音が響く。

「お姉ちゃん、元気?」

 ここにルアーナが入ってから一月程。ファーナは毎日のように姉の許を訪れていた。

「今日も撫でられに来たの?」

「み、魅力的……いや、そうじゃなくて。」

 ファーナは真剣な表情に変わり、ルアーナも身構えるように聴く。

「反乱が起きるよ。」

 その言葉にルアーナは心の底から驚いた様で、

「へぇ~~………え?」

「えぇぇぇ!?こ、国民が!?」

 数秒遅れて理解したルアーナは鉄格子の隙間からファーナの肩を持ち前後に揺らす。

「お、お姉ちゃん、落ち着いて。」

「ご、ごめんなさい。」

 ファーナの言葉に我に返り、謝るルアーナ。しかし、ファーナは何気なく笑顔だった。


「それで?具体的には?」

「隣のリントは分かるよね?そこから来た三人が今回の反乱の首謀者だよ。」

「へぇ~、でも急にどうして?」

「えっとね…

 まず、その三人がこの国に来たのは復讐のため。

 お姉ちゃん、覚えてるかな?私の最初のお仕事。リントの貴族達を殺す依頼。その家族がその三人。

 アンブラーはこの国を根城にしている。

 っていう、噂が流れてたから。

 そこで、三人がこの国の酷さ?…えーと「惨状よ。」そう!それ!で、国に反乱しよう!ってなって、私が、アンブラーは国の貴族に雇われている。この国の王や隣国の主要な貴族を殺していたのはこの国の貴族達が国を乗っ取るため。って。」

 話を聞いたルアーナは自分の妹を誇りに思うと同時に、不安を覚える。この子が自分の脅威になるのではないか?…と。

「それを伝えに来てくれたのね。ありがとう。」

 感謝する姉に笑顔で首を振るファーナ。

「?」

「まだだよ。この国の王妃様は国を乗っ取る貴族達に負けず、地下の牢屋でボロボロになりながらも助けを待っている…予定だから。」

 そう言うと、昨日の雨で泥の様になった土の床を手で掬う。

「ファーナ?」

 ファーナはいきなり自分の体にその泥を塗りたくる。

「ふっふっふ。お姉ちゃんと泥んこ遊びぃ!!」

 あらかじめ作っておいた牢屋と牢の前の廊下を繋ぐ脱出のための道を通り、泥だらけのまま、満面の笑みで姉に突撃する。

「ちょっ!?ファーナ!?落ち着…」

 その悲痛な叫びは届くことはなく、お互い泥だらけになった。



「満足!」

 後ろから姉に抱き付く妹。

「もう、これがやりたくて私のことを反乱軍に話したのね?」

「むっ、そう…かもしれないけど、その方がお姉ちゃんを助けてくれると思って。だ、だって酷い事はされない…でしょ?」

 その言葉に、口を尖らせ、シュンとしたが自身の考えを口にする。

「ふふ、そうね。私のためにありがとう。」

 そう言って泥だらけの手で、妹の頭を撫でる。

「えへ。」

 それに対してパッと顔を輝かせ、嬉しそうに姉を抱き締める。


「今日は楽しかった。反乱さん達とがんばってね。」

「まっかせなさい!私の演技見せてやるわ!」

 二人は何が可笑しいのか、二人で笑い始めた。
















「ガル、終わったか?」

 黄緑色の髪を持つ青年が赤い髪の青年の肩を叩く。

「あぁ、終わった。元凶マーチェランは今、首を落とした。」

 ガルと呼ばれた青年は深く息を吐く。

「皆!悪の元凶は倒した!我らの王妃を助け出すぞ!!」

「おおぉぉぉ!!!!」

 後ろで鎧も着ず、分不相応の武器を持つ男達が腕を掲げ、声を張り上げる。

「治療班は地下の牢屋に!急いでくれ!!」

 その言葉に、女性達が先程までマーチェランが座っていた玉座の下にあった、地下に続く階段を駆け下りていった。


 先頭を走る淡栗色の髪の少女が指示を出しながら走る。

「皆さん!王妃様が今どのような状況か分かりません!何事にも落ち着いて行きましょう!」

 そうして、女性の一団は王妃のいる牢屋の前に問題なく来ることが出来た。


 そこには俯せに倒れていた女性がいた。

「ル、ルアーナ様!!メルモさん、王妃様です!」

 そう叫んだのはメイドとして働いていた女性だった。

「っ!皆さん離れてください!!」

 メルモと呼ばれた少女は手で女性達を制して、目を閉じる。

 瞬間、メルモの頭上に白い刃の様な物が現れ、牢屋の鉄格子を破壊する。

「あぁ!ルアーナ様!!」

 先程のメイドは鉄格子が壊れた瞬間、牢屋の中に飛び込みルアーナを優しく抱き抱える。

 メイドはルアーナの顔に耳を近付ける。

「良かった、良かったぁ!ルアーナ様!!皆さん生きています!」

 ルアーナの呼吸音を聞き、涙を流しながらも笑顔で顔を上げた。

「良かった……皆さん!王妃様を御部屋に運びましょう!運ぶ方以外は部屋に行って急いで手当ての準備を!」

「「「「「はい!!」」」」」






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ガル·タイラ    赤髪

フーシャ·エンドー 黄緑髪

メルモ·ミナミ   淡栗髪

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