第9話(後編)
生徒会室にて。
生徒会長こと
「さすがだ」
「たまには珈琲じゃなく緑茶もいいでしょう?」
ここ、
「それは
と笑うのは
「確かに。
と頷くのは、赤髪の女子生徒。
「……っすね~」
とか細い声で言った
(誰この人!? てか俺はなんで呼ばれたん!?)
知らない人、わけのわからない状況でした。
ばりっといい音がしました。
「にしても、
「ん?」
「
(ドラフト制は、欲しいやつをさっさと選ぶに限る)
「ま、そういうこともある。ユニットを全員揃えるのは難しい。
「
「毎年のこととはいえ、寂しいものですね」
「と、ところで
「どうした
「あの、そのー、こちらの方は」
妙に見覚えのある気がする赤い髪の女子生徒。謎です。
「ああ、言われてみれば初対面か。では紹介しよう」
こほん、と
「我らが生徒副会長、
「よろしく頼む、
(
「スオウってもしかして、え、姉弟ですか?」
「……のようなものだ」
赤い髪、どことなく感じる神秘性はなるほど
(あとシンプルに背が高い)
ともすれば中学生にも見える
「して、
「そうだな。みんなも改めて聞いてくれ。今日、ここに集まったのは他でもない。体育祭のことについてだ。まず、芸能科の体育祭は『加護の能力を使うこと』がルールで認められている」
「え?」
風紀委員室にて。
「そ、それは、大丈夫なんですか?」
やけにゴージャスな内装の風紀委員室で、
「大丈夫、とはどのような意味でしょう?」
ティーカップを持ったまま、
「能力によっては事故につながるのでは」
「もちろん一部の能力には制限があったり、禁止もありますわ。
「
と
「当然だ! あの
と
「お、おう!」
負けじと
「しかし能力の利用がありなら、戦略が必要ですね……」
このつぶやきに、
「その通りですわっ。昨年の体育祭ではあの男にいいようにやられましたが、今年はそうはいきません。こちらにはジョーカーがいるのですから」
その視線の先にいるのは、
「お、おれ?」
「そうか!
「ええ! 少なくとも一方的に能力を使われることはあり得ませんわ。だって、こちらはコピーすればいいのですから」
「でもスズメがコピーしても下位互換になるだけなんじゃ?」
「こちらは『どの能力をどのタイミングでコピーするか』を考慮しなければならない。その時点でかなりのロスだよ」
「今年はことごとくピックが被らなかったからなぁ」
「被った方が良かったんですか?」
この疑問には隣のソファに座る、
「選んだ生徒が被っていれば、じゃんけんで決めることになるんだ」
「じゃあ、結局運なんじゃ……」
「
「そ、それは……」
言葉に詰まる
「大したことじゃない。実際勝率はせいぜい8割――」
「ず、ずりぃ……」
「ず……?」
ぴたっと
「は、
「
「生徒会長の任は
「え? あ」
「責任重大っすもんね! よ、生徒会長!」
しばし沈黙。
「……そう、責任は重い」
(よかった戻った)
弛緩した空気で生徒会室が包まれます。
「万が一負ければ、生徒会執行部は総解散だからな。俺も任期を待たず辞任だ」
「え」
「例年のルールなんだ。そして執行部を明け渡すというのは、在校生の一生を左右し得る」
「そもそも本校における生徒会長は、先祖返りの次期リーダーと言えますわ」
「そうなんですか?」
きょとんとした
「
「生徒会執行部とわざわざ仰ったので」
まったく察していない
「
「生徒会執行部は、選挙によって選ばれる生徒会長と副会長、そして会長と副会長に選ばれた役員で構成される」
「ふむふむ」
「そして生徒会は――全校生徒から構成される」
「ふむ?」
つまり。
「
3万人。
改めてすごい人数だと
(さすが
「国内にいる、その世代の先祖返りが全員集められていますわ。すなわち生徒会長とはある一つの世代における頂点。卒業後も影響力を持ちます」
「その結果、数年にわたって同じ派閥が生徒会長を務めることになれば」
数年から十数年、果ては数十年と『
「もちろん、国の行く末も変わりますわ」
「なるほど!」
生徒会室にいる
(なんで俺は呼ばれたんやろ)
そんな
「
と
「適度な緊張を生み出すために使えば、味方へのバフになる」
「なるほどね。
「ああ、俺の『集中』と合わせれば味方のパフォーマンスが上がることは間違いない。集団戦向きの能力だよ」
「……能力バトルものの話してます?」
「当たらずとも」
「遠からずかな」
「さいで」
(住む世界が違うんよ……、いや今となっては俺もこっち側なんか?)
「今年はわたくしたち西軍が勝利し、執行部も風紀委員会も掌握いたします」
爛々と眼を輝かせる
一方、傍に控える
(ハジメのバカが俺をさっさと取らねぇせいだ……チビチコは東軍なのに)
また、同じく傍に控える
(ルリが迷惑かけてねぇといいが)
体育祭というだけでテンションの高い
「なんで西軍はスーツなんですか?」
藪から棒にとはまさにこのこと。
「あら、簡単なことですわ」
「映えますもの。グッドルッキングガイが」
かくして。
その火蓋が切って落とされようとしているのでした。
「しかし暇じゃなぁ、
「……ウン」
作戦会議に速攻で飽きた
「おぬしは力も使えんし、退屈じゃろう」
「別に」
「たまには我を出したいとは思わんのか?」
「運命の導き手たる、八咫烏の先祖返りよ」
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