前のエピソード――第79話　既望

　ここは「地球屋」。

　天の川銀河太陽系第三惑星の「地球」と呼ばれる星のさまざまなものを売っている。

　レッサーパンダ、ワオキツネザル、ホッキョクグマなんかが人気だね。パンダももちろん、大人気！

　ガラスケースに入れて、リビングなんかに飾るのが流行っているんだ。

　注意して飼わないと死んじゃうけど、そのときはまた新しいのを買えばいいからってみんな思ってる。

　トラやライオン、ゾウなんかも人気。カメも人気だよ。カメの中でも一番人気は、アオウミガメ。イルカやクジラみたいな、海の生き物も需要があるよ。

　ガラスケースの中を彩る、さまざまな植物ももちろん必要だ。

　一番人気はなんだって？

　そりゃあ、もちろんニンゲンだよ！　ニンゲンって、知ってる？　　地球の寄生虫！

　あいつら、天の川銀河太陽系で、奇跡の水の惑星と言われている地球を、どんどん改変していっているんだぜ？　ありとあらゆるものを食い尽くし、環境をどんどん変えていっている。短期間の間に。ちっちゃいのに、すごいパワーとエネルギーだよ。　ニンゲンはさ、いつの間にか地球にはびこっていたんだ。驚いたよ。

　そしたらさ、地球そのものを愛でていた人たちが怒っちゃってさ。

　ああ、やつら、権利を買っているからね。地球に干渉出来るさ。

　それで、どんどんニンゲンを捕獲するようにしたんだ。おもしろいくらいいるからさ、いろんなのが。で、試しに売ってみたんだよ。

　そうしたら、思わぬ人気が出てさ、よかったよ！

　おもしろいように動き回り、叫んだり喚いたりする。ふいに静かになったりする。二匹入れておくと、うまくそのまま生きる場合もあるし、殺し合いになる場合もある。予測出来ないんだ、動きが。わくわくしながら、観察することが出来るってことで、人気なんだよ。

　何匹も入れておくと、だいたいケンカして数匹に減る。ときどき共喰いしていることもあるんだってさ。餌入れ忘れたりしているときとかさ。気持ち悪いよな。まあでも寄生虫だから仕方がないよね。

　そうそう、増えるときはあっという間なんだ。驚くよ。あいつら年中発情期らしいんだよ。どうりで増え方が尋常じゃないと思ったよ。

　＊

　あ、久しぶり。最近はどうかって？　ニンゲン？

　ああ、最近さ、ぼーっとしているのが増えてさ、人気が落ちちゃって。寄生虫もだんだん質が変わるんだな。人気急落だよ。商売あがったりだよ。おまけにさ、ニンゲンを捕獲しなくなったら、寄生虫パワーで地球がますます汚くなっちゃってさ。……困ったよ。この店はフランチャイズだからさ。……うん、廃業かもしれない。……うん、決定だと思う。

　あ、てかさ、地球そのものが廃棄らしいんだ。もう美しくないから、差し替えて新しい美しい惑星をつくって、愛でようって。……うん、そう。権利を買っている連中がさ、そう決めたんだよ。今度の惑星はニンゲンみたいな寄生虫がわかないようにって。

　あんなにさ、ニンゲン見て楽しんでたのに、勝手だよね。まあいいけどさ。

　　「ここは『地球屋』。人気のメニューはね」　了

　　＊ショートショートの連作で、１０万字超の長編にいたします。

　　　１話ごとに読み切りの形式で、次話に続きます。

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