第10話 彼女の名前はエリー

 我が家はエリーが全てを取り仕切っている。


「おはようございます。朝ですよ」

「おはよう、エリー」

「おはようございます。朝食をどうぞ」

 僕は朝食を食べ始めた。

「今日はコーヒーですか? 紅茶ですか?」

「コーヒーをお願い」

 エリーの淹れてくれたコーヒーを飲む。

「今日のニュースはこちらです」

 リビングに備え付けられた画面に、ニュースがいくつか表示される。僕は全部をざっと見てから、おもしろそうなものをピックアップして詳しく見た。


「そう言えば、今日の天気は?」

「今日は午後から雨予報です」

「そう」

「折り畳み傘をお持ちください」

「分かった。今日はどんな服装で行けばいいかな?」

「暖かくなってはきたけれど、まだコートは必要です。手袋も」

「うん、分かった」

 僕はエリーに言われた通りに準備をする。


「そう言えば、お勧めの小説は何? この間のはもう読んじゃったんだ」

「今日は、ミステリはいかがですか? スマホに送ります」

「……きたきた。ありがと、エリー!」

「どういたしまして。……ところで、シュン」

「何、エリー?」

「この間の女性のことですが」

「ああ、ミチル? ……やっぱり、よくない?」

「ええ。シュンにはもっとふさわしい方がいらっしゃると思います」

「分かった、そうするよ」

「そろそろ出かける時間ですよ」

「じゃ、行ってくるよ」

「遅延もないですし、予定通りに到着すると思います」

「ありがと」

「何かありましたら、またスマホでご連絡を」

「うん、そうするよ。いってきます」


 僕はリビングに備え付けられた画面に映った女性に挨拶をした。彼女の名前はエリー。物心ついたときから、ずっといっしょにいる。家のことは何でもしてくれるし、スマホを通じて外でも話せるし、ほんとうに頼りになるんだ。

 彼女の名前はエリー。エリーの言うことを聞いていれば、万事OKだ。




  「彼女の名前はエリー」 了


  *ショートショートの連作で、10万字超の長編にいたします。

   1話ごとに読み切りの形式で、次話に続きます。

   毎日2回(7時、18時)更新。よろしくお願いいたします!

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