第41話 悪い知らせ

コトッ

「……負けだな」


劉良がそう言うと

目の前の呉範がニヤリと笑う。


劉良は、暇そうにしていた呉範を捕まえて

模擬戦をしていたがこれまで全敗していた。


「いや〜守備を捨てて

 全軍で突撃してきた時は、

 負けるかと焦りましたけど

 何とか勝てたなよかったよかった」


「その割には、余裕そうだったが?」


呉範の言葉に少しイラッとしてそう言い返しながら盤上に視線を送る。

盤上は、中央突破しようとする劉良の駒を

上手く捌き包み込む様に

呉範の駒が囲んでいた。


(実際上手くいったと思ったんだが

 見事に捌かれてしまった)


「それは、場数の差だろうね

 どうやら君は、前の人生では

 大軍同士の戦いの経験が少ない様だし

 僕は、呉軍の軍師だったからね」

 

呉範の言葉に自分の過去を思い出してみると確かに少数戦は、

部隊を率いて何度も戦っているが

大軍同士の戦いというと数回しか経験してないと思い出す。


「確か幽州を出た後は、

 并州の黒山賊に入って

 その後冀州の袁紹軍に

 士官したんだっけ?

 君もなかなか数奇な運命だね〜」


黒山賊に入った当初は、

賊に身を落としてしまったと

落ち込んだものだが

数日するとそれも気にしなくもなった。

それに黒山賊時代に妻の白とも出会えたしな。


その後は、とある理由で

黒山賊にいられなくなり

袁家に仕えて最後は毒杯…確かに

なかなか波瀾万丈な人生だ。


「逆に呉範は、どうだったんだ?」


「普通の人生だよ、揚州に生まれて

 修行の毎日、それに飽きて

 その時じわじわと勢力を広げていた

 孫家に仕えて後は普通に

 軍師として過ごしただけの人生だよ」


「それは、普通の人生か?」


「僕にとってはね……」


呉範は、急に話をやめて外をみる。


「…それより風の便りがきた様だ

 それもとびっきり


劉良がどう言う事か聞こうとした時

部屋に冬項が入ってくる。


「どうした?」

「薊県から緊急の知らせが届きました」


そう言って差し出された木簡を

受け取り書かれている文字を読む。


「……これは」


そこに書かれていたのは、

と言う文字だった。

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