第40話 〇〇為に死んでくれ (他視点)

「父さんただ今帰りました」


「おう、どうだった徳然とくぜん


元起は、作業を止め

商人達が集まる会合に行っていた息子である劉徳然に視線を向ける。


「不確実ではあるものの

 情報を掴んだのでしょう

 数人が及び腰になっていました」


「まぁ情報を完全に

 止めることはできないからな

 …動く必要はあるか?」


「いえ、張世平と蘇双両名が

 積極的に動いている為大丈夫かと」


張世平と蘇双か…馬の取引で財をなしている豪商だがこんなに積極的ではなかったはずだが?


「屯田所の担当が叔父上達だからです」


「…そう言うことか」


子敬兄と言うか高春義姉上の荘園は、

ここ最近どんどん拡大していき

その中で馬の生産販売では、

県令(公孫瓚)中心に

確かな顧客を持っており最近では軍部も取引を始めており、

張世平と蘇双など一部の馬商人から目の敵にされていた。


「まぁこれは、八つ当たりではありますが」


徳然の言葉に元起は、首を横に振る。


「違うこれは、脅しているのだ

 自分達の領域を犯すな

 さもなくば、官僚の道を潰すとな」


この脅しは、子敬兄や義姉に効くだろう

劉良の将来を潰す事になるし

もし潰されなくても足を引っ張り続ける

問題になるからだ。


「どうするんです?」


「何もしない」


元起の言葉に徳然は、眉をひそめる。


「商売の提携ぐらいにしておけば

 いいものを愚かな事だ

 小さな村でしかなかった荘園を

 一代しかも女子の身で

 あそこまで大きくした

 喧嘩を売るなど」

 

(化け物か…)

徳然は、以前あった高春の事を思い出すが

優しい叔母上と言う印象で

到底化け物と呼ばれる人物には思えなかった。


「徳然、お前は物作りの才能はあるが

 商人としての能力は、まだまだ未熟だ

 だからこそ今回の件を任せた。

 よく見ておけよ、

 どう言う立ち回りがいいのか

 そして立ち回りを間違えた商人の末路を」


「承知しました」


徳然が頭を下げるのをチラリと見ながら

元起は、窓の外を見る。


「…なぁ徳然、お前は劉備をどう見る」


「父さんそれは…どう言う」


「俺は、劉備に期待している

 一族を繁栄に導くとな

 だから安くない金を払って、

 お前と一緒に盧植殿の私塾にも通わせた」


元起は、顔を戻し徳然を見る

その顔は、能面の様だった。


「だが本当にその価値は、

 あったのだろうか?」

「それは…」

「仕官もせず飲み歩くだけの劉備

 方やお前や劉良は、成果を出し続けている

 さて…どうするべきか」

「劉備を見捨てるつもりですか?」


元起は、少し考えた後

「損切りは、商人の鉄則だろ?」と告げた。












「見捨てる?…冗談じゃない

 劉備は……〇〇になるのだから

 しかし……あぁそうだそうしよう

 〇〇…劉備の為に死んでくれ」

 

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