第33話 公孫続との一騎打ち

「よし…調子は良さそうだな」


その言葉に答える様に

灰色の毛並みの馬が声を上げる。


この馬は、つい最近劉良の

持ち馬になった馬で

気性は、穏やかで乗りやすい馬である。


「頼むな」


劉良は、そう言って馬に乗る。


「どうぞ」


「ありがとう」


劉良は、訓練用の装備を受け取り

白い鎧に身を包む公孫続の前に馬を進める。


「劉良殿、手合わせの願いを聞いてくださり感謝します」


「いえ、しかし本当に

 私でいいのでしょうか?

 あれでしたら、今からでも我が自慢の部下に変わりますが」


「劉良殿がいいのです!!

 私と歳が近いにも関わらず

 この幽州の政治の方針に影響を与え

 しかも盗賊討伐で武功までたて、

 今もっとも勢いがあると言っても過言ではない貴方が!!」

 

「そっそうですか…」

 

公孫続の熱意に押された劉良は、

公孫瓚に視線を送る。


「まぁそう言う事だ、

 とにかく一度手合わせしてやってくれ」


「はい…わかりました」

「それではお願いします!!」


劉良と公孫続は、一瞬見つめあった後

馬を走らせる。


「…ふっ!!」

「はぁーー!!」


走り出した二人が重なる瞬間

二人が放った一撃がぶつかり合う。


「くぅ…」


その結果公孫続押し負ける。


「ふむ…趙雲、張繡よ

 どう見る?」


呉範は、一緒にいた二人に問いかける。


「そうですね一撃を見た感じ

 単純な技量は、劉良様があると思います

 …ただ」

 

「ただも何も完璧にこっちの若君が強いだろ

 残念だがあっちの若君も強くはあるんだが

 いかんせん実力が違いすぎる」


「それは、わかっている

 だがあるだろう若君が公孫続殿に負けてるところが」


「ほう何処が負けているのだ?」


呉範が趙雲に聞くと

趙雲は、一言

「馬術です」と呟いた。



劉良と公孫続の一騎打ちは、

初撃から今まで劉良のペースで進んでいた。


(すごいな優勢なのに攻めきれない 

 さすが公孫瓚殿のご子息だ馬の扱いがうまい)


劉良が必殺の一撃を加えても

公孫続は、見事な馬術で馬を操り

上手く力を逃していた。


「くっ!流石です劉良殿!!

 このまま戦っても勝てる気がしません

 …だから戦い方を変えさせていただく」


そう言って、並走していた公孫続が馬のスピードを落とし背後を取る。


劉良も背後を取られない様にするが

馬術の差か背後を取られてしまう。




「これは、流れが変わったか?」


「えぇ、まともに打ち合えば

 劉良様の方が強いですが

 あんなふうに背後を取られしまえば

 まともに攻撃ができません」


「むぅ…武の事は私には、わからんが

 これは、負けるのか?」


「そうですね、このまま対策が取れなければ「はっ」…何だ張繡」


「いや趙雲お前もまだまだだな〜と思って」


「何?」


張繡は、ニヤリと笑う。


「あの華雄殿に指導をうけ認められた若君が この程度で負けるなどありえねぇ」


「しかし、実際問題追い詰められているではないか」


「そりゃ相手の土俵で戦っているからな

 そう見えるだろう

 ただななどねじ伏せられて終わりなんだよ」




「もらったー!!」

「ふっ」

「なっ!?」


劉良の背後に公孫続が繰り出した槍は、

ひらりと避けられ掴まれる。


「公孫続殿、動きが止まってますよ」


「えっ?ぐっ!!」


槍が掴まれた事で一瞬動きを止めてしまった公孫続に劉良の一撃が入り吹き飛ばされる。


吹き飛ばされた公孫続が体勢を立て直そうとするがその目の前に槍が向けられる。


「…降参です」


「ありがとうございました」


劉良は、馬から降りて手を差し出す。


その手を握り返し公孫続が立ち上がる

見た感じ怪我はなさそうだ。


「ふぅ…やはり敵いませんでした

 最後は、上手くいったと思いましたが」


「確かに後ろを取られた時は焦りました」


「しかし、結果は負けた」


公孫続は、悔しそうに呟く。


まぁ確かに背後を取られた時はやられたと

思ったがあの程度の突きなら

冷静に対処すれば普通に受け止められた。


伊達にあの華雄から厳しい鍛錬を受けた訳じゃないからな。


「修練不足だな続よ」


「父上」


公孫瓚殿が皆を連れて歩いてくる。


「背後を取るまではよかった

 だが、その後の突きがあまりにも未熟

 あれでは、反撃してくださいと言ってるものだ」


「はっ帰ったら鍛え直します」


「うむ、劉良よ手間をかけさせたな」


「いえ、こちらも未熟な所を

 見つけることができ感謝しております」


今回の一騎打ちで、馬術の未熟さを思い知った。もし本当の戦場で相手が将軍レベルならなら死でいる。


「ふむ…そうだ劉良よ」


「はい」


「次は私と一騎打ちしよう」


「…はい?」

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