第30話 胡散臭い笑顔
「………」
「………」
「……はい、問題ありません
それではこれで」
「ありがとうお疲れ様
……よし!!終わったー!!」
劉良は、部下を見送った後
手を広げ後ろに倒れ込む。
この瞬間があるから仕事を頑張れる。
ハァ…ここ数日、
収穫期の忙しさに振り回されて
ばっかりだったからな…
やっぱり統括できる人間を増やさないと
今年は、田畑も広がった為に
対応する人数自体は増やしたが
それを管理する人間が少なく
屯田所の仕事も混ざり
仕事量が去年よりも多かった。
「行儀が悪いわよ」
いけない母上が居たのを忘れてた…でも
「すいません母上、今だけは目をつぶって下さい」
「もぅ…仕方ないわね」
劉良の母高春は、
劉良の姿に少し呆れながらも
ここ数日の忙しさを知っている為
目をつぶる。
「それにしても大変だったわね今年は」
「ええ、母上にも苦労をかけました」
「ふふいいのよ、飢饉とか賊とか
そんな悪い事じゃなくて
いい事で忙しいんだから
それよりもあの呉範って子は、
どこ行ったの?」
「あぁ、呉範なら許先生と出かけてます」
まぁ元々、許先生と共に
この地に来たのだ
呉範からも許先生がいる間は、
あちらと一緒に行動すると言われている。
「許劭殿とそう…残念だわ〜」
「母上って、呉範の事気に入ってます?」
「えぇ、お話しも上手いし
何より占いできるしね
屋敷内で評判いいわよ〜よく当たるって」
「ほうそれは、嬉しい限りで」
声がした方を見ると呉範が柱に寄りかかっていた。
「あら呉範」
「高春様、ご機嫌よう」
「呉範出かけてたんじゃ」
劉良が質問する。
「いや許劭殿の方に急用ができてね
途中で帰ってきたんだ」
「あらそれは残念ね」
「いえいえそう言う時もありますよ高春様
それに代わりに帰り道
良い肉屋を見つけましてね
ついつい買ってしまいました
調理場に預けているので夕食に出ると思いますよ」
「あらそれは、楽しみだわ」
高春がコロコロと笑うが
劉良は、少し不安になる
果たして呉範が普通の肉を買ってくるのかと
「ふふ、安心して良いよ
肉を売っていた男に少し興味が湧いてね
肉はとても上質な普通の肉だから」
「それなら良いが」
「うんうん、それで良い」
そう言って笑う呉範の笑顔が胡散臭くて
心配になる劉良だった。
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