第29話 天を読んだ男 後編
「…と言うわけで大部分の記憶は消されたが
私に関する未来や
一部の知識が残っているのさ…」
「はぁ…つまり途中途中の
意味不明な言葉は、その未来の知識と?」
劉良は、呉範の話を聞いていた。
正直信じられない話しだったが
自分自身、人生をやり直している人間なので
否定できないでいる。
「あぁすまないね…平常時には、問題無いが
興奮したりすると出てしまうんだ
しかも自分では認識できないのも
問題でね」
「それじゃ仕官も無理なんじゃ…」
と言うか普通の仕事も…あっ占術師があるのか。
「占術はしていくが
それだけで生きていくつもりはないよ
だってつまらないじゃないか
他人の人生を見るだけじゃ…ね」
「それじゃ未来通りに孫家に?」
呉範は、首を横に振り。
「それもつまらない、
決められた道を通る様で
君もそうだろ?」
「えっ?」
「ふっ…だいぶ未来を変えてる様だが?」
「うっそれは…」
指摘が図星すぎて言葉に詰まらせる。
「責めてるわけではないよ、
君は、何か思いがあってしてるんだろ?」
「自分は…もう奪われたくなくて」
「ほう…奪われるね乱世では、
よくある話しではあるが
君の様子だと特定の人物の様に思えるが?」
劉良の頭に一人の男が浮かび上がる、
自分の正義に酔いしれ
いくら周りが犠牲になろうと
構わない男…劉備。
「…良ければ教えてくれないかい?
それほどまでに君の顔を歪ませる男を」
「…劉備…劉備玄徳」
その言葉に劉良は、ポロリと言葉をこぼす。
「劉備か…」
呉範は、名を聞いて難しい顔をする。
「劉備を知ってるんですか?」
「よく知ってるよ、
戦も上手とは言えず政治も下手だが
その異常な危機察知能力、
そして、有能な人材を惹きつける人徳を持つ厄介な男だよあの男は…」
「そうですか…呉範殿が知ってるとなると
自分が死んだ後も
しぶとく生きてたんですねあの野郎」
「こんな事を聞くのも何だが
君が死んだのは?」
「袁紹と曹操が戦って袁紹が負けた後です。
劉備の親戚と言う事で
敗戦の責任を取らされて」
「あぁ…官渡か…
それは、恨んでもおかしくないな」
その後抑えきれず、
劉備にされた事を全部曝け出した。
呉範は、それを静かに聞いた後、
「…まぁ深くは言わないが劉備は、
その後もしぶとく生き続け
天下を三分した勢力の一角を担う英傑になったよ」
それを聞き劉良は、
奥歯をギリと強く噛み締める。
「まぁ最後は…いや辞めておこう」
言葉の先を聞きたかったが話しぶり的に
ろくな最後じゃなかったんだろう。
「それで君は、奪われない為に
今頑張ってるんだね?」
「はい…ですが上手く
いかないことも多くて
劉備を前にすると気持ちを抑えられなくて
そのせいで父親とは、仲違いしましたし
力を手に入れる為にした行動が
しがらみを作ってしまって
身動きが取れなくなったり」
「まぁ人生そう言う物だ
未来を読める私ですら
上手くいかないことの方が多いのだからね
だがそうか…劉備か…面白そうだ」
呉範がニヤリと笑う。
「劉良殿、超絶優秀な軍師は
必要ありませんか?」
「呉範殿!?それって…」
「貴方についていくのは面白そうだ」
呉範の提案は、渡りに船だ
文官系の配下がいなかった事もあるが
何より未来の知識がある事を知っている
理解者がいるだけで精神的に安心する。
「わかりました、それならこれから
よろしくお願いします」
「ハッ!!ふっ…ありがと心の友よ!!」
そう言って呉範は、劉良に抱きつく。
「ちょっ!!と言うか心の友って!?
それに今気づいたけど
自分が未来の記憶がある事を何故気づいた?」
「それは、魂が他の人間と違うし
君は魂だったから
覚えてないだろうが
前に一度会ったことがある
その時に君は、心の友と決めたのだ!!」
「それってまさか…」
「ふっ魂になっても守るとは
愛とはすごい物だな」
そう言って呉範は、ニヤリと笑った。
と言う事でだいぶ変わった軍師が
仲間に入った。
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