第28話 天を読んだ男 中編
「呉範…大丈夫か…?」
魏騰は、風が強い為少し離れた場所で
呉範を心配そうに見つめていた。
「ほっほっほ…なかなか面白い事
しておるの〜」
「!?」
突然隣から声が聞こえ驚いてそちらを見ると
酒を持った白い髭の爺さんが座っていた。
「ん?どうした欲しいのか?」
「えっじゃ頂きます」
「ほ?…面白い奴じゃのう〜
普通なら誰だ!?とか驚くのじゃが」
爺さんは、ほっほっほと笑いながら
杯を魏騰に渡し酒を注ぐ。
「この程度で驚いてちゃ、
あいつの友人をやってられませんからね…
それであなた誰?」
「あっ聞くのじゃな」
「それは…うまっ!!何この酒!?」
は、飲んだお酒の美味さに驚く。
酒精は強く、辛味より甘味がくる酒で
いくらでも飲めそうな味だった。
「そうじゃろ、それは普通の酒に
神桃を混ぜた物じゃ
ちなみにわしは、于吉うきつ
しがない仙人じゃ…」
「へぇ〜仙人か…仙人!?」
せいぜい呉範と同じ占術師だと思っていたが
仙人とは予想の斜め上だった。
「ホッホッホ、驚いたな?」
「それは驚くでしょ
なんで仙人がここに?」
「なんでってそりゃ、どっかの命知らずが
天にちょっかいをかけているところを
見たのでな」
命知らず…魏騰は、呉範を見る。
「そんなに危険ですか?」
「当たり前じゃろ
嵐の長江を裸で泳ぐようなものだ」
魏騰は、それを聞いて血の気が引く。
呉範が確かに危険と言っていたが
心の何処かで呉範だから
大丈夫とたかを括っていたが
于吉から具体的な例を教えられて
水の怖さを知っている揚州人として
その危なさを認識した。
「しかし何でまたこんな事を?」
「それは…」
魏騰は、これまでの事を説明する。
「ふむ…」
一通りの話しを聞いた于吉は、一言。
「アホじゃろお前さん方」
「アホ!?」
「そうじゃ、確かに蒼天は死んだ
それで原因を知ってどうするつもりじゃ?
起きた事はもう戻らない
それに人の身でどうこうできる問題ではない」
「それは…そうですけど」
「それに数日すれば新たな蒼天が昇るしの」
「えっ!?そんなんですか!?」
于吉は、呆れた目で魏騰を見る。
「当たり前じゃろ、
そうでなければこの世は、
とっくの昔に滅んどるわい」
「はぁ…確かに」
「…まぁ、その蒼天は昊天を支えていた
前の蒼天とは違うがの…」
「えっ…何て?」
「いや何でもない、それより友人はいいのか?」
「え?」
魏騰が呉範の方を振り向くと
風の中心でパタリと倒れていた。
「呉範!!」
「ふむ…天に呑まれたか」
「なっ!?呉範は?
呉範はどうなるんです!?」
「そりゃ…魂が呑まれたのだから
人形の様に動かず後は、飢えて死ぬだけだな」
「そんな…何か助ける方法は、
無いんですか!?」
「ありはするが…」
「于吉殿どうか…どうか!!
我が友、呉範を助けてください!!」
魏騰は、膝をつき必死に于吉に頼み込む。
「ふむ仕方ないの…」
于吉は、そう言って呉範の方に向かう。
「だがな一度天に呑まれたのじゃ
正気は、残っておらんかもしれんぞ」
「それでもお願いします!!」
「ふむそれならば」
于吉は、トンと杖をならすと
呉範の周りに吹き込む風がおさまる。
「まったくバカな真似をするもんじゃ」
そう言って呉範の額を杖でトンとすると
呉範の体が一瞬光る。
「ほい終わったぞ」
魏騰が近づくと呉範が目を開ける。
「呉範!!」
「魏騰… What the hell happened to me?」
「は?」
「Olen kindel, et lained viisid mind minema」
「なっ何を言ってるんだ?呉範おい!!
しっかりしろ」
目を覚ました呉範が訳のわからない
言葉を話し出し混乱する。
「于吉殿!!」
「うむ…これは天に呑まれた影響か?
まぁ…取り敢えず言葉は、通じる様にしよう」
そう言って于吉が再び杖をつく。
「魏騰?この言葉が…聞こえていないのか?」
「ッ!!聞こえてるぞ呉範!!」
呉範の言葉が普通戻り
それに安心した魏騰は、これまでの事を説明する。
「ふむ…なるほどつまり
吾輩は猫になりフランスに行き
茶を海に捨て七つのボールを集めていたと言う事だな」
「???、違う違う!!何言ってるんだ!?」
「あぁ…魏騰残念ながらこれは、
正気を失っとる。」
「えっ…そんな信じられない」
「ん?この絶世の美女と呼ばれ
弓の名手で扇を撃ち、
ティータイムをするこの私が正気で無いと?」
「あっ信じますこいつ正気じゃ無いですね
治りませんか?」
魏騰は、呉範の様子を見てすぐに考えを改める。
「切り替え早いの〜!?
まぁ…そうだの…
今の状態は、天に呑まれた事により
天にある過去、今、未来の情報を
すべて取り込み
自分でも訳が分からなくなっている
状態じゃ…
だから一番手っ取り早いのは、
記憶をなくす事だな」
「あっならそれで」
「軽いのお主!?」
魏騰の返答の軽さに驚く。
「いや呉範が記憶をなくすのは、
何回も経験がありますので
その程度なら問題無いです」
「いや問題大いにあるじゃろ
それにこやつは、魂に情報が
刻み込まれてしまっている
だから消すとしてもどうしても
少しは残ってしまい時々
変な言動をしてしまうじゃろう」
「うーん、変な言動はいつもの事なので
それに消さないとこのままでしょ?」
「まぁ…そうじゃの」
「それじゃ困るでしょ、
呉範それでいいな」
「私は神「はいかいいえで」…No」
「いいそうです、さぁ早くやってください」
なんか嫌そうにしてるがの〜と
言いながら于吉が杖を構える。
「魏騰」
「何だ?」
「お前の人生に二回の命の危機がある」
「普通に話せるじゃ…は?
おっおい!!どう言う事だ!?」
呉範は、魏騰に不穏なことを言った後
眠りについた。
「呉範ー!!」
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