第25話 心の友よ!!

「失礼致します」


田豊を筆頭に県令である公孫瓚に挨拶をする。


「おお!!来たか急に申し訳ない

 さっ…こちらに」


「はっ」


田豊達が前へ出ると公孫瓚と共にいた

二人の男が視線を向ける…って

そのうち一人は、顔見知りだった。


「おお其方は」

「もしかしてどなたかお知り合いですか許劭殿?」

「ああ、久しぶりだな劉良よ」

「はっお久しぶりでございます許先生」


そこにいたのは、人物評論家として天下に名が知られる許劭殿だった。


        ・

        ・

        ・


「いや〜世話になってすまんな」

「いえ、許先生ならいつでも歓迎ですよ」


あの後、知り合いと言う事で

許劭殿とその従者?の二人を

お世話(押し付け)することになり

自分の荘園に招待した。


「ハッハ、そんな事言ったら

 毎日お世話になってしまうよ」


「フッそれなら次からお金でも取りましょうか?」


「それは、困るからほどほどにしよう」


許劭殿そう言いながら笑う

しかし何故幽州にいるのだろう?

そう聞いてみると


「ん?それは…もしかして知らされてないのか?」


「えっどう言う事でしょう?」


「いや知らないならいいのだ」


許劭殿がしまったなぁと言う顔をする。


どうやら自分に関係する事で

わざわざ幽州に来たらしい。


このまま聞いても答えてくれなさそうなので後で調べてみるか?


「しかし驚いたな

 仕官するのは、数年後だと思っていたが」

「私も成り行きでこうなったので驚いてます」

「そうか、それなら今の環境に感謝する事だ

 お主と共にきたあの二人、

 まさに古の張耳と陳余にも劣らぬ英雄よ」


自分の尊敬する二人が褒められ嬉しい。


「はい感謝しています。

 それに許先生にそう言われたと聞けば

 喜びましょう」


劉良がそう言うと許劭が首を横に振る。


「いやそれはやめておけ」


「えっ…何故ですか?」


「あの者達もそうだが公孫瓚殿も

 人物評論が苦手なようだからな

 機嫌を損ねよう」


「それは...」


「ハハよいよい、多いのだそう言う者は、

 やはり人から勝手に評論家される

 しかもその者が無位無官の者なら尚更な」


確かに許劭殿は、無位無官ではあるが

褒められれば栄達が必ず来ると

言われ万金を払ってでも評論されたいと後が立たない。

天下に知れ渡る人物評論家である。


「それに英雄は、

 そうじゃなければいかん!!

 最近の者達は、名だけを求めて

 評論に振り回され

 自分を磨こうとしない

 いくら素晴らしい宝石の原石だろうと

 きれいに磨かねば、

 そこら辺のただの石ころと変わりないと言うのに」


そこまで言うと許劭殿がふっと笑う。


「まぁそれを私が言うのもおかしい話だが」

 

「いえ許先生のお話し心に響きました

 私の才は、宝石というほどのものでは

 ありませんがそれでも自己研鑽に

 励み磨いていこうと思います。」


そう言って頭を下げる劉良に

許劭は、近づき肩をたたく。


「うむ、その心意気素晴らしいと思うぞ

 ただ一つ…劉良お主の才は、

 私が見てきた中のどの宝石とも劣らぬ

 言えに磨けよその才を」


「は!!」


許劭の言葉に劉良は、気合いを入れた返事をした。


         ・

         ・

         ・


「ふぅ…」


筆を置きふと外を見ると星空が満開に輝いていた。


「お疲れ様でした」

「うん、許先生はおやすみになられたか?」

「はいぐっすりと」

「そうか」


劉良は、立ち上がりグーと体を伸ばした。


突然の歓待だったのでドタバタしたが

何とかなったな。


「使用人達も大変だったろう

 後日でも何か差し入れを送ろう」


「はっそれは、皆喜ぶと思います」


「そうか……私は少し庭に出てから休もう

 お前達は、もう下がってよい」


「はっ」


そう言ってその場にいた使用人達が下がっていった。


劉良は、明かりを持ち庭に出る

庭は、静寂に包まれ聴こえるのは虫の音のみ


「このままでいいのだろうか?」


劉良は、夜空を見上げながらそう呟いた。


劉良が転生してから早数年、

未来を変えようと様々頑張った

そのおかげか、着々と力を持ち始めたが

しかし、その反面家族の仲は悪くなり

それに...


劉良は、懐から一つの手紙を見る。

「…白」


愛しそうに書かれている文字をなぞる。


前世において暗闇の中で、

もがき苦しんでいた自分を

光の方に連れて行ってくれた女性


自らも大きな傷を負いながら

献身的に支えてくれた最愛なる妻


そんな彼女を今世では救いたいと思った

そして、運良く今世で見つけることができた。


だが、そこまでだ白の住んでいる凉州と

自分の住んでいる幽州は遠く

今は、ただ文通相手としての間柄だ。


それに白に襲いかかる不幸な出来事も

具体的には知らない。

このままでは、助ける事などできないだろう。



『…風がないている』

「誰だ!!」


声がした方を見ると1人の男が立っていた。

確か許劭殿と共にいた人物。


その男がニヤリと笑い口を開いた。




「はじめまして、

 そして、我が心の友よ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る