第24話 何の用事か?

「しかし、こんな機会が来るとは、

 人生何が起こるか

 わかったもんじゃないな」


「機会ですか?」


劉良、沮授そして田豊の三人は、

琢県県令である公孫瓚のもとに会話しながら向かっていた。


「ああそうだ、正直私は、冀州の小役人として一生を終えると思っていた」


「そうでしょうか?

 沮授殿の才覚なら

 どんな重役でも勤められると思いますが」


実際、沮授殿は将来的に袁家の中核を担う

人材なのだから。


「ふっそんな地盤もなければ金もない

 そんな男が出世できるほど

 世の中は、甘くないよ」

「…ふん」


確かにこの幽州に来る前の二人は、

名は、知られていたが

沮授殿は、冀州で

田豊殿は、洛陽で燻っていた。


「だが俺たちは、

 皇族であり出世株の劉虞刺史の元で

 働ける機会をえられた

 これは君のおかげだありがとう」

「…そうだな感謝する」


正直、この二人を幽州に

呼んでいいのか悩んでいた。


もしここで幽州呼んで

未来が変わり恩人である二人の人生が

悪い方にいったらどうしようかと

最終的には、刺史に推挙したのだが

ずっと心の奥底に不安があったのだ。


だが沮授殿の言葉を聞いて、

あぁ呼んでよかったのだと

安心と嬉しさで胸の奥がジーンとした。


「っと、いけないこれから県令に会うと

 言うのに少ししんみりしてしまったね

 それで二人は、今回県令に、

 呼ばれた理由はなんだと思う?」


そう言って沮授殿が話題をかえる。


「…単純に屯田の進捗を確認するためじゃないか?」

「私もそう思います」


その答えに沮授殿は、

どこか納得していないように見える。


「沮授殿は、違うと?」


「あぁだって、こんな急に呼び出すなんて

 おかしいだろ?

 自分は、交渉役として何回か

 県令殿の所に行ってるがいつもは、

 ちゃんとこちらの予定を聞いて

 調整してくれるんだよ」


「それなら何か緊急事態が起きたのでは?」


「いやそうでもないと思う、

 それなら使者が急かすだろう?」


確かに…ならどんな用事で呼び出されたのだろう?


「…招かれざる客」


「なるほど…追い返すには、大物

 されど長居はしてほしくない人物

 それならこちらを呼び出して押し付ける

 もしくは、急として来れなければ

 責をこちらにと…」


「...なかなかどうして考えるじゃないか」


そう言って沮授がニヤニヤと笑う。


こう言う時の沮授殿は、

いつもは、爽やかな分

ねちっこくて面倒くさい。


「何か失礼なことを考えてないかい?」


「いえ!!そんな事はありません!!」


「ふーんまぁいいや、後で聞き出すから」


え…ここは、許す流れじゃないのか…?

…本当にねちっこい。


「…それより行くとしよう、

 あまり待たせすぎるとこちらの不利だ」


「そうだね、それじゃさっさと行こうか」


「はい!!」


話題を変えてくれた田豊殿に感謝しつつ

この先に待っているであろう県令の元に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る