第21話 何者だ?(褚燕視点)
「グッ!!ガハッ!!」
「それでぇ…言いたい事はそれだけか?」
自慢の黒い髭を触りながら
目の前に転がる男に視線を送る。
「…す…いッ…」
「聞こえねぇな〜」
そう言って男が手を振ると
部下が目の前の男に木の棒を打ちつける。
「…ガハッ!!
もっ…申し訳ございませんでした!!」
「違う違う謝って
欲しいわけじゃないんだよ
…俺はな?
なんで勝手な真似をしたか
聞いてんだよ」
「そっそれは…」
「俺さ言ったよね
これから大事な時期に入るから
あまり目立つことはするなよってなぁ」
男は、部下が杯に一杯についだ酒を飲む。
「それなのにさぁ...
なんでやっちゃうのかな?」
「それは…誘われて」
「誘われたら俺の命令を無視するんだ?」
「いや!!それは…」
「まぁ俺達は、
賊だからしかたないかぁ〜」
男は、立ち上がりボロボロの男に近づく。
「褚燕様…いっ!?」
グシャ
褚燕と呼ばれた男が
叫ぼうとした男を踏みつける。
「騒ぐなよ…なぁ!!」
褚燕は、顔を蹴り飛ばし背を向け
部屋の扉に歩き出す。
「…すいません…すいません」
「謝らんでいい、おい…可愛がれや」
「へい」
褚燕の言葉に部下達が頭を下げる。
「あっ…ちょ「もし…耐え切れたら許してやる」」
「褚燕様ー!!」
褚燕は、男の叫びを尻目に部屋から出て行った。
「はぁー…」
「お疲れのようで」
自室に戻り酒を一杯飲んだ後
褚燕が深いため息をついていると
誰もいないはずの暗闇から話しかけられる。
「ああ酒をかっくらって、
何も考えず女抱きたいくらいにはな」
「望むなら用意しよう」
「やめてくれ、いつ寝首をかかれるか
わかったもんじゃない
それより、調べたんだろ?」
褚燕が暗闇に視線を向けると黄色い布を身につけた男がスッと現れる。
「あの者達をやったのは、
官兵ではなく私兵だった」
「私兵ね〜公孫瓚か?」
「いや、劉良と言うものが率いていたらしい」
「誰だそれ?」
褚燕は、頭の中で幽州の有力者の名前を思い出すが、劉良と言う名前が出てこない。
「前に豪族が運営する斡旋所に行った事があるだろう?」
「えっ…ああ…あったな…ってあそこ?」
「そうだ、そこの嫡男だ」
確か身元が定かではない人間でも
ちゃんとした給金をもらえると
聞いて偵察に行ったのだったな。
まさかあそこがねぇ…
活気はあったがそんな脅威に
感じるほどではなかったが
あいつらが弱かっただけか?
「…どうする?」
黄巾の男が問いかけてくるが答えは決まっている。
「どうするも何も大人しくしろって
言ったのはお前らだろ
だから何もしねぇよ」
「面子が立たないんじゃないか?」
「ハッ!!無能が殺されただけで
傷つくような安っぽい面子じゃないんでね」
しかし、おかしいな?
いつもは静止する方なのに今回は、
逆に煽るような言葉を投げかけてくる。
…これは、何かあるな。
「何が望みだ?」
「望みなど」
「おい...俺達の間に隠し事は無しだろ?」
褚燕が睨みつける。
もしここで誤魔化すような事があったら
一度関係を見直す必要がありそうだ。
褚燕の考えてる事がわかったのだろう
黄巾の男が
渋々と言った感じでポツリと呟く。
「…大賢良師様が調べるようにと」
「何!?」
おいおいおい、予想外の答えに驚く
大賢良師と言えば黄巾らの首領じゃないか。
これは、興味が出てきたな一度会ってみるか。
「わかった、俺が行こう」
褚燕がそう言うと黄巾の男は、頭を下げる。
「…すまん」
「いいさ、代わりに酒の相手でもしてくれや」
「わかった」
そう言って酒の入った杯を差し出すと
黄巾の男が受け取り酒を飲み干した。
しかしその劉良って奴は、何者だ?
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