第20話 張繡と趙雲

「ただいま帰りました母上」

「ああ、良お帰りなさいどこも怪我してない?」


屋敷の前で自分の帰りを待っていたのだろう

母上に抱きしめられる。


「はい大丈夫です。」


劉良は、震える母上を安心させるように優しく返事をする。


「高順もお帰りなさい

 貴方も無事ね怪我はなかった?」

「はい姉上、

 今回は劉良の補佐に回りましたので」

「そうよかったわ

 さぁ詳しくは中で聞かせてちょうだい」

「「はい」」

         ・

         ・

         ・


「なるほどね、やはり高順を

 実家から呼んで正解だったわ」

「本当にありがたいです。

 うちは、実践経験の浅い者達が多いため

 心配だったんですが

 叔父上がいてくれてるおかげで

 軍が引き締まります」

「………」


劉良は、体の汚れを落とした後

母上と叔父上の三人で食事をしていた。


「そう言えばあの2人にも

 部隊を任せたのでしょ?」


あの二人、それは張繡と趙雲の事だろう。

二人は、私兵を増やすにあたって

それを指揮する人材を探していた時、

張繡は、涼州の賈詡先生に

趙雲は、中山大守の張純様に紹介された

者達だった。


「あの二人は、よくやってくれたと

 思いますよ、叔父上はどう思いますか?」


「よくやったが…問題点も見えたな」


「問題点ですか?良ければ聞かせてくださいませんか?」


ふむ…あの陥陣営が二人をどう見たのか気になる。


「…張繡は、凉州の男らしい

 苛烈な攻めを得意とする

 だがその反面、血が頭にのぼりやすい」


確かに若さゆえか血気にはやる所がある。

だがそれは、経験によって改善されていくだろうと劉良は、考えていた。


何故なら張繡と言う男は、

賈詡先生と共に

なのだから


「趙雲の方は…槍だな」


「槍…ですか?」


「あぁまだまだ未熟であるが経験を積めば

 攻めに使えば敵を的確に穿ち

 守りに使えば柔軟に立ち回る

 名槍なりえる人材だ」


「あらそれは、いい人材を紹介していただいたわね」

 

…趙雲か、前世でチラッと話しを聞いた程度だったがそんな逸材だったとは、

確か前世では公孫瓚の配下だったはず。


「…ただ、あまり重用はしない方がいい」


「えっ?それはどう言う?」


叔父上の意外な言葉に驚く。


「あのタイプは、

 自分の中に1つの信念を持っている

 その信念に反するなら

 自分達が危険に晒されようとも

 使える主君の命令だろうとも背くだろう

 自分を正当化してな」


「それは…」


これは、難しい問題だ

信念を持つことは、大事だ

だが命令に背くのは言語道断だ。


だが、気持ちとしては遠ざけたくない、

何故ならその言語道断な行為をしてでも

自分を守ろうとした人を知ってるから。


「確かにそういう人間は、

 あまり重用はできないわよね〜

 人としては、好きな部類だけど」


母上も納得しているようだ。


「ですけど…」


それでも、渋る劉良に高順は告げる。

「まぁ…それでも重用したいなら

 覚悟を決める事だ」


「覚悟ですか?」


「あぁ信念を曲げてまでも

 成したいと思えるほどの

 趙雲に示し続ける覚悟をな…」

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