間話・家族 後半 【劉元起視点】

…長兄か…

長兄の名前は、劉弘(りゅうこう)

我ら兄弟の中で一番期待され

一番早く亡くなった男だ。


「私が無能なばっかりに

 お前達にも迷惑かけて」


子敬兄は、申し訳なさそうに項垂れている。


そんな兄を見て元起は、

深いため息をついた。


「ハァ…あのな、そもそも

 俺達は迷惑なんて思ってないし

 子敬兄の事無能だとは思ってねえ」


親父と長兄が病気で死んだ後

残された家族は大変な目にあった。

周りにいた人間は、ことごとく離れていき

残ったのは、親父が見栄のため借りていた

借金と小さな荘園だけだった。


幸い俺達は、属尽ぞくじん(漢の皇帝の末裔だが宗室の資格を失った疎遠の親族)

だったお陰で税や軍役も免除され生活費も

貰えたのでなんとか

借金をかえしながら生活できたが

そんな極貧生活では、

身を立てるなどできない状況だった。


そんな状況を良しとしなかったのが

子敬兄だった。


兄は、友人達に頭を下げて職を見つけ

俺達の為に必死に働いてくれて、

俺には、商人の道を

劉敬には、役人の道を歩ませてくれた。


「俺達が嫁を貰えて手に職をつかれたのは、

 子敬兄のおかげだ」


「そうだね、感謝してもしきれないよ」


「…お前達」


「だからな、兄よ無能というな

 それと一人で抱え込まずに

 俺達や奥さんに相談しろ

 そうすればこんなことにはなっていない」


もし俺達…いや俺だけでも相談してれば

動きようもあったし


義姉に相談していれば今の様な事は、

怒らず義姉も荘園に引っ越す事もなかっただろう。


子敬兄は、俺が伝えたいことがわかったのだろう小さくうなずいた。


「それで子敬兄、

 俺達に言う事あるか?」

 

「…それは」


「俺達は、家族だ」

「そうだよ家族」


俺達がそう言うと子敬兄は、

覚悟を決めて口を開く。


「劉元起、劉敬…二人とも

 …助けてほしい」


「おう」

「わかったよ」


俺達は、力強く頷き

行動を起こすことにする。


…さてどうするか







ー後書きー

劉子敬と劉敬は、最初一緒の人物だと

思っていましたが別人のようです。


やはり昔の人物で記載も少ないのでどうしても名や字名が分からない事があります。


正直、分かりにくいので名前を変えたいなと

考えていましたがそれもそれでと考え

一旦そのままで行きたいと思います。


長兄…劉弘(故人)

次男…劉子敬 (幽州役人)

三男…劉元起 (商人)

四男…劉敬 (無職・前職兗州役人)

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