間話・愛する貴方と深まる疑問 【賈詡視点】
「お嬢様」
『何かしら?』
「賈詡様華雄様がいらっしゃいました」
『…そう通しなさい』
私と華雄は、侍女に促され部屋に入る。
「失礼致します」
部屋に入ると数人の侍女とその真ん中で
筆を持ち何かを書いている少女が目に入る。
「昨日帰って来たばかりで
ごめんなさいね
今じゃないと報告が聞けないと思って」
少女は、筆を止め視線をこちらに向ける。
「いえお嬢様がお呼びなら
いつでも駆けつけます」
隣にいる華雄がそう言って
恭しく頭を下げる。
これほど礼儀正しくする華雄も珍しいが
それは目の前にある少女が
燻っていた我々を今の地位まで押し上げてくれた恩人であるからだろう。
「そう…なら報告頼めるかしら?」
「はっ!!」
私達は、少女に幽州で調べた事を報告をする。
彼の実力や家族関係
そして今置かれている状況…など
「…そう、お義母様が予想外だわ」
「…はい、まさかあそこまで頭が回るとは、
こちらの思惑を見透かして、
見事に守られました。」
私は、頭を下げる。
実は、我々二人が幽州に向かったのは、
視察などではなく
とある人物…劉良の現状を調べ
機会があれば涼州に連れてくるのが目的だったのだ。
「いいえ気にする必要はありません
元々、旦那様が苦しい生活をしていたら
私が引き取ろうと思ってただけですもの
しかし、嬉しい誤算だわ
私は、てっきり劉備贔屓の人間しか
いないと思ってたから」
そう言ってくすくすと嬉しそうに目の前の少女は笑う。
「お嬢様」
「ん?何かしら」
「婚約者でもない者を旦那様と言うのは…」
少女の隣にいた…確か教育係の侍女が
注意しようとした瞬間、
「は?」
「ひっ」
少女の雰囲気が邪悪な物に変わる。
「旦那様を旦那様と読んで
何が…いけないの?
私が愛する人は、
旦那様…いえ劉良様ただ一人よ!!」
「そっそれは、御当主様がお認めにッ」
ドンッ!!と少女は、机を強く叩きつける。
やはりまだ認められていないのか
ある日突然少女が、夢を見ました
私には運命の人がいます
その人と結婚します
と当主である祖父に宣言したらしい。
当然祖父は、子供の幻想だと
真面目に取り合わなかったが
少女から伝えられる情報があまりにも
生々しかったので調べてみると
本当にその人物がいて大層驚き
とりあえず、もう少し大人になったら認めると
言って今日まで認められていない様だ。
「…確かにまだ認めて頂けてないけど
だけどね貴方に注意される謂れはないわ」
「いえ、私は御当主様から教育係を」
「なら解任します、衛兵」
「は!!」
部屋の外から兵士が入ってくる。
「この女を牢屋に放り込みなさい」
「は!!」
兵士達が侍女を捕える。
「おっお嬢様!?」
「ああ…そうそう、
貴女が取った翡翠綺麗だったでしょ
あれ私の宝物なの」
突然の事に驚く侍女に少女がそっと語りかける。
少女のその言葉に侍女の顔が青くなる。
「あっいや…あれは…」
侍女は、何か言い訳を呟いていたが
途中で兵士に口をふさがれて
無理矢理連れていかれる。
「ッーー!!ッーー」バタンッ…
「…さて、邪魔者はいなくなったし
話を戻しましょうか。
それで貴方達が涼州に帰ってきた今
私は、これから何をすればいいの?」
「はい本当は、お嬢様と劉良…様の婚約を
取り付けたかったのですが
なにぶん突然涼州に帰ることに
なりましたので…
残念ながら打診するまでしか出来ず」
「私も残念よ、お祖父様ったら
人手が足りないからと
貴方達まで呼ばなくてもね…
それで…賈詡文和ともあろう者が
手ぶらで帰って来たわけじゃないでしょ?」
「はい、お嬢様には、
文通をして頂ければと」
「文通?誰と?」
少女が首を傾げる。
「高春様でございます。
やはり彼女としては、
涼州と幽州では距離が遠く
気軽に会うことができないから
文通で人となりを見たいと」
「なるほど…お義母様が」
「もちろんお嬢様が嫌なら」
「嫌な訳がないわ!!
わかりましたすぐに文を考えるわ」
「賈詡」
「ん?華雄どうした」
少女の部屋から退出し自分の家に戻ろうとした私に華雄が話しかけて来た。
「あの事は、お嬢様に
話さなくてよかったのか?」
「あの事?…ああ劉良が話していた
白と言う少女の話か…
今言う必要はないだろう
それに白と言う少女が
お嬢様じゃなかった場合が大変だぞ」
「それは、そうか?」
「そうだよ」
しかし…本当にお嬢様が
劉良の言っていた白なら
劉良とお嬢…いや董白は、
何処で出会ったのだろう。
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