第三十二話 劉良の未来

「さぁ…こい」


「ふぅ……はっ!!」


一つ深呼吸した後

劉良は、鋭い突きを繰り出す。


ガッ!!

「おっいいぞ」


華雄は、嬉しそうにそれを受け止める。


劉虞が来てから数日後

劉良達は、荘園にいた。


「あら…すごいわね」


離れたところで劉良の鍛錬を見ていた

高春は劉良の成長に驚く。


「そうですね華雄が言うには、

 技術的には、そこらの将軍を圧倒する

 能力を持っているらしいですよ

 後は身体がどう成長するかで」


「そう…なら劉良には、

 一杯ご飯を食べさせなきゃね!!」


隣に座る賈詡の言葉を聞いて気合をだす。


「はいそれがよろしいかと

 …残念ながら私どもは、

 良の成長を見ることは出来ませんし」

 

「…いつ帰るの?」


「明日にはここを出ようかと」


賈詡が残念そうに呟く。

昨日、華雄と賈詡の元に命令書が届いた。


その命令書によると異民族の活動が活発化すると共に反乱が起きる前兆あり

今は、一人でも優秀な人材が欲しい為

両名帰還せよとの事だった。


「しかし凉州は、大変ね

 貴方達まで呼び戻さないといけないなんて」


「仕方ありません

 まぁこれが凉州と言う辺境に生きる者の

 宿命ですよ」


「…そう、私達も気をつけないとね

 幽州も辺境なのだから」


「さっそんな事言ってる間に

 終わりそうですよ」

 

その言葉に高春は、目の前に視線を戻す。


「ハッ!!」


「甘い!!」

劉良の放った突きは、

華雄にことごとく受け止められる。


「ハァ…ハァ…」

「どうした!?もうバテちまったか!?」

「いいえ!!まだ!!」


劉良は、槍を構え直す。

さっきからチャンスは何度もあったが

上手く一撃が入らない。


(あんな事を言ったけど正直きつい

 やるとしても次が最後の機会だろうな

 なら…あれを)


劉良は、覚悟を決め華雄に向けて

最後の突撃をする。


「行きます!!」


「…こい!!」


劉良は、全力で距離を詰め突きを繰り出す。


だが疲労のためか突きタイミングを間違え

早めに繰り出してしまう。


「あっ?踏み込みが甘い!!」


当然華雄は、それを咎めに行くが…


「何ッ!?」


劉良の手から離れ槍が飛んでくる。


(何だ?手が滑ったのか?)


華雄がその槍を弾くと目の前から

劉良の姿が消えた。


「何処だ!?」

「もらったッーー!!」

「何!?」


死角から手戟の様な大きさの木剣が

迫ってくる。


「ぐっ!!」


「はーー!!」


華雄の死角に潜り込んだ

劉良が華雄の胸に木剣が突き刺さす瞬間

横から薙ぎ払われ吹っ飛ばされる。


「良!!」


高春は、慌てて良の元に駆け寄る。


「すっすまん!!つい本気を出してしまった。劉良大丈夫か!?」


華雄も慌てて近づく。


「だっ…大丈夫です。

 それより…今の当たりましたか?」


劉良は、痛む身体を我慢して

華雄に問いかける。


「…あぁ、確かに当たったぞ」


少し悔しそうに

自分の胸をさしながら華雄は言う。


「やっ…やった…

 華雄先生に一撃与えられたッ!!」


「こら!!動かない!!」


吹っ飛ばされた拍子に怪我をした場所を手当てしていた母上に怒られる。


しかし考えて欲しい

あの華雄に一撃を与えられたのだ

嬉しくてはしゃぐのも仕方ない。


パチパチパチ

「素晴らしい、劉良良くやりましたね」


拍手の方向を見ると

こちらに向かって賈詡先生が歩いてくる。


「賈詡先生!!」


「しかし劉良、その木剣はどうしました?」


「ああ…これですか?」


右手に持っていた木剣を見る。


「これは…華雄先生にどうやったら

 一撃を与えられるか考えて、

 隠し持っていました。」


「これは卑怯だと思うか?」


賈詡が悔しそうにしている華雄に

問いかける。


「そんなわけないだろ

 戦場で卑怯もクソもあるか

 …劉良」

「はい」


華雄は、劉良の頭をガシガシと撫でる。


「良くやった…合格だ」

「ありがとうございます!!」

「だが…慢心せず鍛錬しろよ

 次会った時、怠けてたら

 地獄見せてやるからな」

「はい!!」


劉良が元気よく返事を返していると

春蘭が屋敷から出てきて、

「皆さまお茶の準備が出来ました」

と教えてくれる。


「あら、ちょうどいいそれじゃ皆さん

 休憩にいたしましょう

 それと良、貴方は着替えてきなさい

 服が汚れているから」


「はい!!わかりました」


(やった勝った!!)


劉良は、喜びに吹っ飛ばされた痛みを

忘れながら上機嫌に屋敷の中に入って行った。





「…ねぇ皆さま」


「どうしました?」


周りの人の視線が高春に集まる。


「劉良はこれからの世を

 幸せに歩めるのでしょうか?」


高春は、着替えに向かった劉良の背中を見てポツリと呟く。


その問いは、子を心配する母が持っている

当然の不安だった。


「…どうでしょうか

 それは正直私達には、わかりません」


賈詡が先頭に立って語りかける。

「ただ、もし危機的状況になったとしても

 その智謀により劉良は、

 乗り切ることができるでしょう」

と自信を持って話す。


「それに、戦場を生き抜けるほどの

 武力もあるしな」

と華雄が言うと

 

「それでもダメなら、

 私達使用人が命をかけて支え守りますので

 ご安心を」

と春蘭が高春に伝える。


「そう…それなら安心ね」


ほっを一息ついた後

劉良の幸せな未来を願いながら

高春は、空を見た。







ー後書きー

これで第一章が終わりになります。

この後、間話を数話投稿した後

第二章が始まります。


さて、この「劉良、天下を歩む」の第一章を

無事終えたのは、皆様の応援やコメントのお陰であります。

ここで感謝をお伝えします。

どうもありがとうございます。


どうぞこれからも

「劉良、天下を歩む」をよろしくお願いします。

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