第十七話 招かざる客【高春視点】

「…奥様」


夜も深くなり静かな静寂に包まれた寝室に

声が響く。


「…春蘭どうでしたか?」


春蘭が影からスーと姿を現す。


「許劭は、本当に劉刺史に

 呼ばれていたようです

 今日県令の所に泊まった後

 州都へ向かうと」


「そう…なら実家は、関係なさそうね」


今日は、息子の為に荘園に来たが

そこに許劭が訪ねてきた。


許劭は、昔から私の両親と仲が良く

県の屋敷ではなく荘園に来た為

少し警戒したが杞憂だったようだ。


「やはりご実家は、連れ戻す事を

 諦めていないと

 考えているのですか?」


「そうね…駆け落ち同然で兗州を出た

 親不孝者を娘を

 今でも心配してくれるのは、

 嬉しいんだけどね」


昔、私と旦那様は、婚約者同士だったが

旦那様のお父様、劉雄様が突然亡くなり

その事で劉家が傾いた事により、


両親がそんな所に嫁に出さないと

婚約破棄を言い出した。

しかし私は、嫁ぐなら旦那様しかいないと

思っていたし旦那様も私を愛してくれたので

私達は、旦那様の故郷の幽州へ駆け落ちした過去がある。


「それともう一つの調査の報告をしたいのですが」


「あぁ賈詡殿と華雄殿のことね…それで?」


旦那様が突然連れてきた家庭教師の二人、

確かに私が家庭教師と言ったが

まさか幽州外の人間を連れてくるとは思わず

二人の調査を手下に任せていた。


「はい調査の結果、

 本当に視察の為に来ているようです」


「それは本当なのね

 それで命令したのは?」


「董卓と言う男です」


「董卓…確か凉州の有力者で精鋭の軍を

 持って異民族との戦いで

 功を挙げている人物よね」


「はいそれで、

 凉州に言った者の報告書なかに

 気になる事が書いてありまして」


春蘭が一つの木簡を差し出してくる

それを受け取り中を見る。


中には、賈詡、華雄両名とも

数ヶ月前まで無名でありながら

董卓の孫娘により推挙され

董卓の有力な臣下となったと、


「確かに興味深いわね、

 数ヶ月前まで無名…ね

 それで孫娘は、何で推挙したの?」


「残念ながらそこまでは、

 ただその孫娘…その5歳でして」


「5歳?…少し信じられないわね」


「はい…ただそんな話をわざわざ

 報告書に書くか?と思いまして」


「…なるほどね、ん?」


春蘭が外を見ている。


「…誰か来ます」


その少し後外から私を呼ぶ声が聞こえる。


「何かしら」


「春楽様から連絡が届いております」


「お母様から?」


「何か聞いてる?」


「いえ」


春蘭が警戒しつつ扉に近づき外にいる者から

連絡を受け取る。


「春楽は、何と?」


「この荘園に招かざる

 客が来ていたようです」


「それで」


「中々手練れだったらしく

 逃してしまったと」


あの春楽が逃した?

高春は、それを聞きこの問題の警戒度を上げる。


「ただその者たちの手掛かりは、掴んだと」


「それは…?」


「客が共通して

 黄色い布を持っていたと」


「黄色い布…黄巾ね…」


高春は、その者たちを調べるように伝えて

その夜は更けていった。


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