第十二話 孤児院
「母上ここは?」
母に連れて来られたのは、
広くでかい屋敷だった。
その中からは、子供の声が聞こえて来る。
劉良が馬車から降りると屋敷の中から
一人の恰幅のある女性が出てきた。
「これはこれは、
奥様突然どうなされたのですか?」
「
息子にここを見せたくてね」
そう言って、母上が私の背中を押す。
「あらまぁと言う事は、こちらが若君?
大きくなられましたね」
「失礼ですが前にお会いになった事が?」
「ふふ、貴方覚えていないかも知れないけど
貴方の乳母をしてくれていた秋母よ」
「え!?貴女が?すっすいません」
劉良は、秋母に頭を下げる。
「ふふ謝らなくていいですよ
幼い頃の事などで…
改めまして私の名前は、秋母と申します
よろしくお願いします若君」
「本当は、引っ越し先にも
来て欲しかったんだけどね
ここの管理を任せられる人がいなくて」
「こんな重要な役目をお任せして、
いただき感謝しておりますわ
…さっ中へどうぞ」
秋母の案内で屋敷の中に入る。
ー誰か来たよ
ー新しい子かな?
ー服が高そうだから違うよ
「ここは…」
「孤児院でございます」
「…孤児院」
遠目にこちらの様子を見る子供達を
チラリと見る。
ーやばっこっち見た
ー隠れろ隠れろ
子供達がパァーと散っていく。
「申し訳ございません、
今いる子達は、比較的新しく来た子達で
まだ警戒心が強いのです。」
「いえ大丈夫よ、
突然来たのだから警戒するのも当たり前」
「ありがとうございます、
さぁどうぞ、こちらにお掛けください」
食堂の様な所に案内され
椅子に座る。
すると一人の女性が来て
お茶をスッと差し出し
無言で去っていく。
母上は、それを躊躇いもなく口に入れる。
「母上!?」
「ん?彼女は、大丈夫よ
ほら貴方も飲みなさい美味しいわよ」
「えっ…あっはい」
母上に促されお茶を飲む
…確かに美味い。
「さて劉良、何か感想は?」
「かっ感想ですか?
美味しいです」
「ふふ…そうじゃなくてこの孤児院の事」
いやそっちかい!!
話の流れ的にお茶だと思った。
「そうですね…孤児院としては
広く子供が多いと感じました」
そう言って劉良は、周りを見る。
食堂は、兵舎の様に大人数入る広さで
孤児院が持つ広さではない事、
そして、道中見かけた子供の数が
異様に多かった事が印象的だった。
「そうですね、現在ここには三百人ほど
子供がいますから」
「三百人!?」
信じられない数字に劉良は、驚く。
「えっとこの子供達は…」
「戦争によって両親を失ったり
捨てられた子達です」
「平和になって少しは、
減ると思ってたんだけどね」
「はい奥様、私もそう思っていたのですが
一向に減る様子はなく
残念ながら、受け入れられない子達も
出てきまして…」
悲しそうに秋母は、項垂れる。
「人は、増やしてるのよね」
「勿論です。ただ子供達の世話という
繊細で体力の使う仕事ですので
人を選ぶ必要がありまして」
「はぁ…確かにそうね」
母上達がため息をついてるなか
疑問に思った事を聞いてみる。
「あの…お金は、どうしてるのですか?」
「それはもちろん劉家がお金を出してるわよ」
「そっそうですか…」
母の言葉に驚く、
三百もの子供を養うなど
どれほどの労力とお金がかかるのだろうか。
「本当にありがたい事です。
こちらとしても少しでも
費用を浮かせる為に
子供達と畑を作り野菜を
作っていたりしているのですけど
どうしても費用がかかり…」
「はぁ…秋母、前から言ってるでしょ
費用の事は、私が何とかするから
だから貴女は、
子供達の事だけを考えなさいって」
「…奥様」
「子供達の母になると誓ったのでしょう?
貴女は、全力で子供達に
愛情を注いであげて?」
「…ッ…はい!!」
秋母は、目に涙を浮かべ何度も頷いていた。
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