第十三話 孤児院建てた理由

「母上」

「ん?どうしたの?」

「あの孤児院は、いつからあるのですか?」


孤児院への視察も終えて、

馬車で移動してる中

母上に聞いてみる。


「そうね〜貴方が生まれるぐらいだから

 もう十年ほどになるのね」


「何故、母上は、

 孤児院を建てようと思ったのですか?」


正直、私にとって孤児院は、

力を持つ豪族や奇特な商人

そして、国が運営する物で、


前者は、小さいながらも

管理が行き届いていて、


後者は、ただ人を集めるだけ集めた結果

子供達が劣悪な環境に置かれていた印象だった。


それを見てきた私にとって、

母上が経営している孤児院は、

大規模でありながらも

管理が行き届いていて、

素晴らしい物だった。


ここまで、どれだけの苦労と財を使ったのか

想像もできない。


「それは、治安向上と将来への布石よ

 孤児院ができる前は、

 荘園の店や畑から食べ物が盗まれると

 言うのがいくつもあったの

 それで調べてみると孤児達が

 組織的にやってたの」


孤児が生きる為に組織的に盗みを働く

よくある話だ。


「だからね、その孤児達を引き取って

 しまえば治安向上になるかなって」


「なるほど、

 それで未来への布石というのは?」


「それは、わからない?」


劉良は、考え込む孤児院の利点か…あっ


「人材育成ですか?」


「その通り」


豪族や商人が孤児院を運営するのは、

見栄と言うのもあるが

やはり人材確保というのが大きい。


孤児は、親がいないつまりしがらみがなく

後がない為、勤勉で命も張れる

その為、費用はかかるが

忠誠心があり有能な人材を手に入れられるのだ。


「なるほど…三百人もいたら

 光る人材がいますよね

 それを教育するのですね」


「ん?違うわよ全員」


「全員!?」


確かに教える事自体は、可能ではある。

…だがそれは、前提として

豊富な資金と多数の知識人を確保できたらの話だ。


資金は、準備出来たとしても

当然知識人の多くは、孤児に勉学を施す事

自体嫌悪する人間が多い上に、

それだけ多くの子供に教えることを考えると

集めるのは、難しいだろう。


それに他にも…

「孤児だけ優遇してると

 民達が許さないのでは?」


「そこは、孤児以外の子供でも希望すれば

 学ぶ事ができると布告してるし

 様々な所で差をつけて反発を抑えてるわ」


「そうですか流石です」


母上が褒められて嬉しそうにしている。


「…でもよく孤児を教えれる人を

 集められましたね、知識は財産だと

 孤児に教えたがらない人が多いのに」


「ふふそれは、次行く場所に秘密があるわ」


「それは、楽しみです」

何だろう?と少し楽しみながら頭を捻っていた。


だからだろうか、

母の陰がある顔に気づかなかったのは…

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