第十一話 荘園

荘園…それは、街や県城から離れた場所に

人を集め田畑を作り

富を生み出し私兵を作る。


荘園とは豪族や富豪が作り上げた

独立した街である。


荘園は、豪族にとっては、

力の源泉であり

その土地の統治者に取っては、

厄介な代物だった。


「さぁ着いたわよ!!」


母上の言葉と共に馬車から降りて

外を見ると一面に田畑が見える。


収穫時期過ぎている為か少し殺風景だが

それゆえに田畑の仕分けがきちんとされており管理が隅々まで行き届いている事やその広さに驚く。


「すごい…!!」


「そうでしょう!!さっ案内するわ

 行きましょう」


そう言って、馬車に再び乗り込み

母上が荘園を案内し始めた。


「良、ここら辺は畑だけど

 ほらあの左側は、果樹園があるの」

「果樹園?」

「えぇ桃や柿、梨とかも作っているわよ」


遠くに確かに木が立ち並んでいる。


「あっ次が見えてきたわね」


そう言って母上が指差した場所には、

馬達が見える。


「もしかして馬を育ててるんですか?」


「正解〜!!最初は、育てるのに

 苦労したんだけど今では、

 なかなか優秀な馬達が出来始めて

 一部、軍とかも買ってくれるのよ

 それに今馬車を引いている馬達も

 ここで生まれたの」


母上がそう言うと返事を返す様に

馬が鳴く。


「そうなんですね…凄い」


「そうでしょう…あっ後で良の為に

 馬を準備させましょう」


「いいのですか?」


「当たり前よ!!

 それで良は、どんな馬がいい?

 公孫の若君とかは、白馬を集めてるようだけど」


公孫の若君…

公孫瓚の事か確かに白馬義従と言う

白馬だけの部隊を作っていたな。


「私は…健康で頑丈な馬がいいです」


「そう?わかったわ

 それにしても良は、面白いわね

 普通子供なら速い馬とか言うんだけど」


ハハ…まぁ中身は、おっさんですから

それにいくら早くても頑丈じゃなければ

戦場では命を預けられない。



その後も様々な所を回っていく。

…しかし人が多いなと劉良は、疑問に思う。


「あの母上、今何人ぐらい雇ってるんですか?」


母上がうーんと少し考えた後、

「七千人ぐらい?」


「七千人!?」


おいおいおい七千人って

支えている使用人や下僕の数が力の豪族の中で名門や有力者に並ぶ数だぞ。


「高春様、違いますそれは

 この荘園だけの人数で

 他の荘園を合わせると一万を超えます。」


「あらそんなにいたかしら」


母上と春蘭の会話を劉良は、

呆然と聞いていた…あり得ない夢を言っているのではないか?

七千人でも多いのに一万人だぞ

そんな家、冀州の甄家や徐州の麋家など

天下に響く富豪ぐらいだ。

 

「そんな…嘘だろ」

「若様嘘じゃありませんよ」

と春蘭が言う。


「それを信じろと?

 一万人などどれほどの数か

 わかっているのか?」

「そうよね…そんなに増えるとは、

 私も思わなかったわ」


高春は、しみじみと苦労を思い出して

呟く。


「ねぇ良、貴方何でここに来たか覚えてる?」

「えっ?それは、幽州最大の問題を見せると」


母上の質問に答える。


「そうよ、今からそれを見せます。

 …そして、荘園が何故それほどの人数になったのかその疑問に対する答えよ」


その真剣な母上の顔は、

前世で幾度と見た為政者達の顔と同じだった。



 

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