第十話 引っ越し?

ガタンガタン

「ハァ…あれがなければ

 完璧な旦那様なんだけど…」


母上が項垂れながらため息をつく。

そんな光景を見ていた春蘭が母上に話しかける。


「奥様」

「…何よ」

「劉良様が見ていらっしゃいます

 しっかりしてください」


「う〜…うん!!」


春蘭がそう言うとうめき声を出した後

母上は、「そうね」と言って自分の頬を叩き

姿勢を正す。


「ごめんなさいね、少しだらけちゃった

 さぁ気を取り直していきましょう!!」


「…母上あまり溜め込まないでくださいね」


「良…ふふ優しい子ねありがとう」


母上は、優しく私の頭を撫でる。


「それで、確か今から荘園に行かれるのですよね?」


「ええそうよ、結構近い場所に

 あるから帰るのも夜までに…いや…

 今日は、荘園に泊まりましょうか?」


母が突然荘園に泊まる宣言をする。


「えっ?いいのですか?」


「いいのいいのどうせ…旦那様は、

 碌でなしと酒盛りするでしょうし」


母上が鼻をふんと鳴らす。


「しかし、突然泊まるって言ったら

 荘園の人達に迷惑がかかるのでは?」


「ふふ大丈夫ですよ、劉良様

 荘園の方にもいつでも泊まれるように

 常駐している使用人がいますので

 ご安心下さい」


劉良の質問に隣に座る春蘭が答える。


まぁそれはそうか

母上が時々荘園の管理の為に泊りがけで

行くんだから使用人ぐらいいるか。


「もしかして良覚えてないの?

 良がこん〜なちっちゃい頃には、

 住んでいたんだけど」


「そうなんですか?覚えてないです」

全然記憶がなく劉良が首をふる。


「そう…まぁ旦那様が出仕し始めるぐらいに

 不便だからって街の中に引っ越したから

 覚えてないのも納得ね…

 しかし、なら驚くわよ〜

 私の育てた自慢の荘園だから」


「それは、楽しみです!!」


前世では、残念ながら母上が

管理していた間に荘園に行く機会がなく。


見れたのは、袁煕様と幽州に来た後

荒れ果てた荘園だった場所を見ただけだった

なので母上の言葉に少しワクワクしている。


「と言うか良、

 荘園に引っ越しましょうか?」

「えっ?」


突然母上が驚きの言葉を放つ。


「前から考えてたのよ

 将来的には、貴方が継ぐ事になるんだから

 荘園に住んで統治の勉強をした方がいいんじゃないかって」


「それは…」


「あっもちろん、貴方も将来的に仕官して

 荘園を使用人に任せる事になると思うけど

 その時に荘園を管理した

 経験を持ってる方が指示しやすいと思うの」


前世では、出来なかった事だ

…確かにこの提案は受けたい、

…ただ…気がかりな事がある。


「母上、母上の話よく分かりました。

 ただ…」


「ただ?」


「師匠達は、どうなるんでしょう」


師匠達は、家庭教師とは別に

幽州に視察しに来ているのだ。


それなのに荘園に引っ越す事になれば

不便だろうし最悪、

講義が出来なくなるかもしれない。


「それは、相談してみてじゃない?

 あれだったら月の半分だけ荘園に

 でもいいしね」


「あっそうか、師匠達も仕事があって

 毎日講義する訳でもないですしね」


ちょっと心配したがそれなら良さそうだ。


「ふふ、そんなに賈詡殿達の講義は、

 いいの?」


母上がふふと微笑みながらこちらに聞いてくる。


「ええ当然です!!」

「ふふ、そう…ならちゃんと講義が

 受けれる様に相談しましょうか」

「はい!!」


と言う事で時期を見て

荘園に引っ越す事になった……ってあれ?


…父上は、どうするんだろ…


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