第五話 今は、強くなる

…華雄

その人は、董卓討伐に集まった連合軍相手に

大立ち回りを演じ恐怖を与えた猛将である。

そんな猛将が今目の前にいる。 


ブンッ!!

「オラッ!!どうした!!逃げてるだけじゃダメだぞッッ!!」


ガッッ!、

「グッ…!!重いッ」


ガッガッと木がぶつかる音が周囲に広がる。

今日は、華雄先生との鍛錬の日だ。


「ふん…よし休憩!!」


「はっ…はっ…」


華雄先生の声に緊張と疲労で座り込む。


「ふむ…劉良お前歳はいくつだ?」

「十歳になります」


歳を聞くと華雄先生が考え込む。


「どうしました?」

「いや…お前…人を殺した事があるか?」

「えっ!?いやありません」


前世では、戦場で戦っていたので

手を血に染めたが今世は、そんな事はしていない。


「…そうか」


先生が難しい顔で考え込む。

もしかして、気づかれたのか?

出来るだけバレないように、

気をつけていたが一流の武人の前では、

バレバレだったのかも知れない。


どう言い訳しようか…


劉良が考えてると華雄が口を開く。


「劉良、一つ聞きたい

 お前は、何で武術を学ぶ?」


「生き残る為です」


「手柄を立てたいとか武の頂を見たいとかではなく?」


「ハハ私は、そこまでの才能が

 自分にあるとは思っていませんよ

 それよりも戦場で死なない事それが大事です」


「そうか……お前中身大人とかではないよな」


「そんな訳ないでしょ」


「だよな」と言って笑い出す。

…正解だよ華雄先生、

武人の勘というのは恐ろしいものだ。


「そうだ、華雄先生に一つ聞きたいことが

 あるんですけど」

「ん?何だ?」

「何故涼州から幽州に来たんですか?」


話を逸らす為と聞きたかった事だったので聞いてみる。


すると華雄先生がピタッと動きを止め

こちらを見る。


「…俺は、涼州から来たとは、

 言った事はないが何故わかった?」

「それは、西側の特有の言葉使いがあったのでもしかしたらと」


我が国、漢は広大な領土を持ってる為

地域によって言葉使いの違いが出ることがある。まぁそれ以前に前世で知っていただけだが…


「なるほどな、まだまだ俺も未熟だな

 …それで来た理由か?

 それは、学ぶ為だ」

「学ぶ為?」


先生達が幽州に来た理由は、

涼州と幽州…共に異民族から漢を守る地域だ

しかし距離が離れている為か

なかなか情報交換がされてこなかった。


その為、文官代表で賈詡先生が

武官代表で華雄先生が幽州に来たらしい。


「えっ?それじゃ先生達忙しいんじゃ…」


「ん?まぁ数日いない時もあると思うが

 一度受けたからには、

 ちゃんと仕事はするつもりだ

 わかったか?」


「はい先生」

なるほどそんな理由があって幽州にきたのか

それなら幸運だったな二人が家庭教師を

引き受けてくれるなんて。


「よしそれじゃ休憩は、終わりだ武器を取れ」


劉良は、武器を取り構える。

集中しろこんな機会はない

俺は、強くなるんだ。


「よし…なら…行くぞッ!!」

来るッ!!

その日は、日が暮れるまで鍛錬は続いたのだった。

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