第四話 謀略の基本は、人を知ること

賈詡…それは、数多の謀略を繰り出し

曹操をあと一歩まで追い詰めた謀略家だ。


「さてそれじゃ始めましょうか」


「よろしくお願いします賈詡先生」


あの賈詡先生と華雄先生との

衝撃の顔合わせから数日後

今日初めての賈詡先生の授業が始まる。


しかし何故、この二人が家庭教師になっているのかわからない。

前世では、こんな事と言うかこの二人が幽州に来てることすら知らなかった。


「それでは、まずはこれから」


そう言って賈詡先生から手渡されたのは、

「論語…ですか?」


「えぇ何か問題がありますか?」


「えっと…」


あの神算鬼謀…天下に覇を響かせた

曹操をあと一歩まで追い詰めた男の

最初の授業がまさか論語とは…

劉良は、少し落ち込んだ。


「…失望しましたか?」


そんな様子を見て賈詡が劉良に問いかける。


「えっいや…」


正直謀略の真髄を学べるかと思っていた。

そんな事を知ったか知らずか

賈詡は、フッと笑う。


「お父上に聞きましたよ

 貴方は、論語ではなく菅子を学びたいと

 それは、何故ですか?」


その質問に劉良は、答える。


「何故か……奪われたく無いからです」


「奪われたく無い?」


そうだ奪われたくないのだ

前世では、劉備にすべて奪われた

両親も居場所もそして自分の命まで、

だから今回は…今回こそは!!

守ってみせる!!


だがそれが難しい事もわかる

…運命を変えるのだからその為には、

徳など綺麗事はいらないし学ぶ時間がもったいない。そう劉良考えていた。


賈詡は、劉良が見せた闇に驚いていた。

ここまでの闇、なかなか見れるものではない

何がもしくは、誰がここまで劉良を追い詰め決意させたのか……面白い。


賈詡は、ニヤリと笑った後

「なるほど…なればこそ

 儒教を学ぶべきだ」と言った。


「それは、どう言う…?」


「敵を知り己を知れば百戦して危うからず」

「…孫子ですか」


こくりと賈詡は、頷く。


「今この国では、儒教の教えが

 最も尊重されており、

 この国で栄達しようとすると

 儒教が必要不可欠です」


「…本当にそうでしょうか?」


私は、賈詡先生の言葉に納得できなかった。

この漢を統治している者達が

儒教を真摯に守る人格者だとは、

思えないから。


「本当に儒者にならなくてもいいのです。

 ただ外面だけ儒者であれば…

 そして、そう言う者達を相手にする時は」


「……儒教を足枷にし貶めればいい」

「…素晴らしいすぐにその発想になる君は、

 筋がいい」


賈詡に、褒められ劉良は嬉しくなる。

「さてそこまで分かると私が君に論語を学ばせる意味がわかるね?」


賈詡の問いかけに、はいと答える。

つまり賈詡先生は、

謀略の基本は、人を知ること

その為に論語を深く知り武器にしろと言っているのだろう。


「…よろしいなら始めよう、

 勿論後に菅子や他の教えも勉強するから

 そのつもりで…

 そしてその後にその利用法を教える」


やはり賈詡文和、考え方が凄い

教えを逆に枷にするなんて、

教えを教えのまま捉えていた自分が恥ずかしい。

さすが神算鬼謀の謀略家と言われるだけある。


「はい分かりました!!」


劉良は、元気よく返事をして

賈詡との勉学に励んだ。

大切なものを守る為に…

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