第14話 渦中
外に出たアイゾウは、自分の握った鍵を確かめながら、普段、親父が使っているガレージのシャッターを開けていた。
「冷てーな、なんで今どき、手動のガレージなんだよ…ロックは電子パスワードなのに…。」
文句を言いつつもアイゾウは、手早くガレージを開け中を覗いた。 ガレージの中には、ケイゾウの趣味全開なアメリカンな車が2台泊まっていた。 よくを目を凝らして見ると車の影に隠れた。 奇妙な形の黒色のマウンテンバイクようなものが壁に立てかけてあった。
「これか…さて…」
アイゾウは息をつくと、足早に暗いガレージの中に駆け込み、そのマウンテンバイクの要な物を調べた。
ソレは、様々な改造が施されており、一見暗がりでは、マウンテンバイクに見える『ダンデム(二人乗り用自転車)』だった。
「シュウも乗せられるようにか…親父…気が利くな…」
アイゾウはそう独り言を呟きながら、ロックを外し、自転車を引いて外に出た。アイゾウは乗る瞬間、ふと空を見上げ思いを馳せ、呟いた。
「親父、、きっと来年は俺の高校祝いも兼ねて原付きでも買ってくれるつもりだったんだよな…。でも、おそらくこの件に首を突っ込んだ時点でオレはもう…。」
アイゾウは生まれつき、天性と言えるほどカンが良かった。
なんとなく足早に目的地に急げば、着いた大雨が降ったり。
なんとなく帰り道を変えたら、その道がその日土砂崩れに合うなんてことはしょっちゅうある。
小学生のとき、バスを一つ何となく遅れされば、本来乗っていたバスが大事故を起こしたりしたこともあった。
六道ソウスケのことなんて最たる例だ。 人間好きで、いつも好き嫌いなく、誰とでも打ち解けられる性格のアイゾウが唯一苦手意識を持った相手が六道ソウスケだった。
そしたら案の定六道ソウスケの正体は人間離れしたバケモノでしかも、アイゾウのストーカーだったのだ。 その一件でアイゾウ自身も自分のカンの良さに完全なる信頼をおいていた。
そんなアイゾウのカンが『この先に進んでは命がない』と告んばかりの悪寒を体中に突き立てるのだ。 それでもアイゾウは冷や汗を拭い、一旦ガレージに戻ると、いつからか親父の車に積んだままだった。リュックを取り出し、なにに使うかも不明な鉄パイプを凄まじいパワーでへし折り、リュックの中に入れた。
自転車を漕ぎ始めた。
後悔はない、それでも友達を助けると決めたのは自分なのだから。
アイゾウが夜の闇を立ち漕ぎで進んでいると突然コートのポケットから振動がなったので一旦道の脇に自転車を止め、ポケットに入っていたケータイを確認した。
「シュウから?! なにが…まさかもう!!」
アイゾウは、六道ソウスケの言っていた言葉を思い出すと、慌てて着信に出た。
「もしもし…もしもし!! シュウ?!」
「………アイゾウ助けてくれ…頼む…。」
アイゾウが鼻息を荒くして、シュウに呼びかけると、反してシュウは暫く沈黙した後鈍く弱々しい、声で答えた。
「シュウ…どうした…何があった。」
「……ハァ…ハァ」
アイゾウは心配して、シュウに尋ねるが、シュウは暫く弱々しく息切れをしたままだった。 アイゾウはそれでもシュウ自身が落ち着いて話せるまで、気を利かせ固唾を飲んで黙って待っていると。 息切れが収まったシュウが、顛末を話し始めた。
「お兄ちゃんが…お母さんと喧嘩して…それで八つ当たりで母さんに僕が…殴られて、それで刺したんだ…母さんを…いま家を出ててった兄貴を探している。」
「なんだと…」
衝撃的なことを告げられたアイゾウは暫く固まった。 文字通り頭が真っ白になる感覚を暫く彼は味わっていた。
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