第13話 試される信用
「チクショウ!!」
通話が切れたことをアイゾウが知ると、彼自身が人生今までしたこともない、形相で机を叩いた。
「アイツ…あの二人のことを…信用していいのか? だが…。」
アイゾウは通話が切れたあとすぐに、コートを羽織り、本と財布をリュックに入れ、外へ出る準備を進めた。 しかし部屋を出る辺りでその手が急に止まった。
迷っていたのだ…コウタを助けにいくか、それとも六道ソウスケの言葉を信じて、神埼兄弟の家に向かうか…。
3人の表情を浮かべ、少し迷ったあと、アイゾウは決断し、部屋を後にした。
アイゾウが廊下を出て階段を降りようとしたとき、廊下の奥、自身の背後から足音が近づいて来るのを感じた
「こんな夜更けに何処へ行くんだ…。」
アイゾウの背後から声をかけたのは。白いヒゲが特徴的なスキンヘッドの男、それは鵜川ケイゾウ、アイゾウの父だった。
「あぁ…とうさん…ゴミ出しに行くんだよぉ…母さんに言われてね…」
「まだ10時にもなってないぞ…だしにいくと…近所に怒られる時間だ…。」
ケイゾウは怪訝な顔をしながら、そうアイゾウに言った、アイゾウは、なんとか泳ぐ目を堪えてごまかそうとする
「あぁ……明日…寝過ごしたら困るだろ…ホラ今…中学校は…冬休み中だ…オレは当然生活習慣は崩れ……。」
アイゾウが言葉をつまらせながらもなんとか絞り出している途中で、ケイゾウからなにかが、投げ渡された。 ソレは大きな豚のキーホルダーが、つけられた『鍵』だった。
アイゾウがキャッチしたその鍵を不思議そうに、見つめていると、ケイゾウがため息をつきながら言葉を吐いた。
「アイゾウ……男の嘘と隠し事には…揺るがぬ信念と理由がなくてはならない…。 そう教えたのはオレだ…お前に口を酸っぱくして、ソレは言ってきたはずだ。」
アイゾウは鍵を見ながら、父親の話を聴いていた。
「ソレはクリスマスプレゼントように買っておいた※けった(自転車)だ。」
父親は鍵の説明をした。
「おやじ…どうしてオレに今これをこれを?」
「フッ…お互いにソレは聞かないってもんだろ?…急いでるんなら、早く行け!」
ケイゾウは笑いながら、アイゾウを見送った、アイゾウはそれに対して、何も答えず下駄箱から、出来るだけ動きやすいスニーカーを選んで履き、玄関にドアノブに手をかけた所で、もう一度ケイゾウに呼び止められた。
「アイゾウ!!…オレと母さんは、例えお前が俺達の知らない、見えない所で戦っていても、お前の味方であり、お前の勝利を信じている。」
その言葉を聞いたアイゾウはドアを開きながら振り向き最期に返答を言い残した。
「ソレはオレも同じだよ親父…。誰にも言えない戦いに望んでいても…オレは家族のことを忘れない…自分を信じられることをしている限り、親父も母さんも俺の味方だって信じているから…。だってどれだけ離れてても家族は家族だろ…。」
アイゾウはそう言い残して家を出た。 なんとも言えない表情でその背中を見送った。ケイゾウはなんとなく、理解していた。最愛の自分の息子が、生きて帰って来るつもりがないことを
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