第12話  闘争

「おい…こりゃ…確定だな…。クラクの推理通り、本のもともとの持ち主は、六道ソウスケで確定だ。」


「そのようだな…。 いや…待て?」


ライトで照らしながら、大量の画像を隈なく探していた。コウタはあることに気づく。


「なぁ本のタイトル…確か…異世界殺し転生者のアルテリアだったよな」


「それがどうした?」


「違う…。」


コウタは正面にライトを向け、そこに照らされた写真を見て、そう呟いた。



「表紙の所、タイトルだ。あと俺がチラッと流し読みした場所が違っている。」



「この画像!本のタイトルが『異世界ブラッドトリガー』だ。この画像は、おそらく似ているようで微妙に違う本だ!!」


コウタの推理を聞いたアイゾウはもしやと思い本の最初のページから再度読み返すと、震える声でコウタに告げた。


「いや…多分合ってる…同じ本さ…。」



「どういうことだ…?」


「今ページを読かえした。変わってたんだ…タイトルと…1ページ目の内容。」


「『異世界王アルテルアと最強血統者の学園宮廷魔道士』…タイトル変わってる…そして1ページ目」


「文字の色が赤黒く変色して…内容はクラクが書店でこの本を買った時のことが書かれて…!!」


アイゾウが余りにも現実離れした内容を話したことでコウタはその場に立ち尽くし、一瞬呆然としたが、なんとか冷静に話の内容を理解しようとした。


「ってことはお前らの言っている通り、その本の内容はノンフィクションで……本が独りでに内容を…!?全く…理由のわからねーことばか…………ッ!!!」


「…アイゾウちょっと待て…」


電話をしている間にパキッ パキッ 突如という、足音が廊下からなっていることに気づいた。


コウタは固唾をのむと、通話したまま恐る恐る廊下を覗いた。


しかし、目を凝らしてみても、廊下の奥まで散らかったガラスとの暗闇しか存在しておらず、それに安堵したコウタは再び写真を調査しようと振り返ったその時。


振り返ったコウタの直ぐ目の前に、突然、アイゾウが自身にのみ見えているという、蝶の仮面をつけた黒装束の男が現れた。


「コウタ!!コウタ!! どうした!! 」


アイゾウは、急に通話中に無言になった、コウタを心配し、呼びかけた。 その直後


「うわぁぁぁぁぁあ!!!」


という、歪んだコウタの悲鳴と同時にベキベキとなにかがへし折れる男とガラス片が蹴散らされる音が鳴り響いた。その後、怯んだ、アイゾウが意識をハッキリさせる前に、コウタとは違う聞き覚えのある声が、通話越しにアイゾウに呼びかけた。


「もしもし、鵜川さん…君を付け回したのは悪かったが…。家まで来るなんて、随分なご挨拶だな…」


アイゾウはその声を聞いた瞬間…頭には血液が上がるのを自身で感じ、湧き上がるそれをなんとか抑えようと、しながら会話を試みた。



「テメェ…六道ソウスケか…コウタをどうした…。 なぜ俺につきまとう?」


六道ソウスケは、自身の足元で血を履きながら倒れ込む、コウタをヘッドに放り投げ、自身もそこに腰をおろした。


 その格好はアイゾウの証言通りだったが、身長が2メートルに届きそうな体格も相まって、不思議なことに人間離れした妖艶なバケモノの雰囲気を纏い、仮面や被っているトップハットも含め、装束というより本人の一部、いうなれば『皮膚』のようだった。


さらに、おぞましくも、美しいことに、彼の腰まで伸びた直毛の金髪は、もとの色が分からぬ程に深い緑色の光を放っており、時折その、髪と神の間から、『蝶』のような、なにかが出現し、複数のソレは踊るように、彼の周りを舞っていた。 


その蝶のような生物は彼の髪と同色の強い光を全身から放っていたが、ソレはまるで、蝶というより、『光の塊自身が蝶の形に擬態している』といったほうが正確で、暗闇でライトなしでは何も見えない、部屋も月明かりのように暗くも鮮明に照らしていた。


「言えない…今はね? でも何よりも、鵜川くん、おまえが大事なんだ。佐々木は無事だよ…。今は寝てるけどそのうち返すさ…それよりも…。」




「クラクと、シュウくんが危ないよ…。 奴らは今夜殺すつもりだ。 彼らの父親を殺ったように…。」


「何だと……。!!」


六道ソウスケは、口元を挟まずに、自分の、言葉を聞くアイゾウに感心しながら忠告を続けた。


「早く行ったほうがいいんじゃね〜? アイツの家に…まぁ俺が言えることはそれだけだから…じゃねー♫」


六道ソウスケは鼻歌を歌いながら、通話を切り、なにかに語りかけるように、独り言を呟いた。





「まぁ君が行った所で意味はないんだけどね。 何年ぶりだろうな、生物が実際に世界を越えるのは…。」


「オレが手伝えるのは今はここまで、あとは貴方しだいだよ…魔王様。」


そう呟いたソウスケはゆっくりと廊下側を覗いた。 


そこにはクラクだけ見えているはずの魔王が佇んでいた。



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