第9話 交差する精神

        ✛

「アイゾウ…お前だけじゃないよ」


オレはわざと二人が気づくようにアイゾウの、後ろに目線を移した。


「そうか…今お前にも…。」


「なぁ? お前ら…その…薬とかやってるわけじゃないよなぁ、、、」


お互い見つめ合ってる俺達に恐る恐るコウタが聞いた。



「いや、オレは、やってない…。 クラクお前は?」


「いやぁ」


「それは残念だ、おれには何も見ない」


コウタはなぜか少し残念そうな、顔をしていった。 前々のことだが、こいつは好奇心旺盛、正直者の反面デリカシーが無い。 おそらくは参ってる俺達にお構いなしにホントに

残念に思っているのだろう。



「まぁ、何にせよ君らが同じタイミングで見えるってことは同じ奴ってことか?」


コウタは再び淡々と俺達二人に質問する。そうするとまた、直ぐにアイゾウがオレに向かって冷静な返答をした。


「俺が見えている幽霊は、全身丈の長い『黒と緑の装飾に身を包んだ』『蝶の仮面被った』長髪の男だ。 お前はどうた? クラク。」


オレは、アイゾウの言葉に少し申し訳無さに近い感情をだき、うつむいて答えた。


「いや…お前とは違う…アイゾウ! お前の見えているそれとは全く別の存在だ!!」


オレは意を決して自身の鞄の中を弄った そして二人の前に例の本『モナリザ』を置いた。


「なんだよ…この本? タイトルがねえーじゃね〜か。」


「分厚いな…それに変な宝石みたいのが表紙に入っているぞ…。」


二人はオレの出したものを不思議そうに見つめ、各々がその異様さを口にした。 オレはこの本を発見したときのことと、見えている幽霊のことを合わせて二人に説明した。


「この本のタイトルは『異世界殺し転生者のアルテリア』だ。 この本の1ページ目に、そう書いてある。だが本自体にも『モナリザ』という名前があることも最終ページにも書いてある。」


「本の内容自体は、よくある、最近流行りのファンタジー物、 死んだはずの少年がとんでもなく強力な力を持って、異世界を旅するものだ。」


「どれどれ…? ん?!」


コウタは話を遮って本を手に取り、試しにっといた感じで、本を開こうとした。 しかし、本は固まったように開くことができなかった。


「なんだコレ?!」


コウタは驚きの声を上げると、席を立ち強引に本を開こうとするが、コウタがどんなに踏ん張っても、本はびくともしない。


「貸してみろ!」


今度はアイゾウがコウタから、本を取り上げ、開こうとした。 すると本は普通に開くことができ、コウタは驚きの目を、アイゾウは呆れた目で、互いを見つめた。


「お前なにやってんだよ…。」


「いや…ホントに開かなかったんだって。」


二人は言い合いをしながら、仲良く本の中を一緒に数ページ読んだ。



「普通だな。よくある異世界転生モノだ。」


「あぁ案外普通だな。どうせこのあと、主人公が大量の女でも囲うんだろ?」


コウタとアイゾウはまさに拍子抜けと言った。感じで、各々の感想を言った。オレは、これから重要なことを話すため、そんな二人の気が抜けないよう目を覗き見ながら言葉を続けた。


「聴けよ。 ここからが重要なんだ」


「まず、おれはこの本を読み終わった時から幽霊が見えるようになった。 というかそいつが初めて見えたとき、前後の記憶はないが、気絶したんだ。」


「「!?」」


二人の表情が一気に引き締まった。 そして同時に固唾を飲んだ事が俺にはわかった。


「オレの見えているやつは、銀髪で紅の瞳を持つ、体長2メートルを超え、背中には四対の黒い羽、悪魔のような尻尾を持つ女だ!」


「そして、そいつの見た目はこの本に出てくる登場人物、『魔王』という存在に酷似している。」


「おい待てよ。」


説明を聴いていた。コウタは、その奇妙さに居ても立っても居られないといった感じで声を荒げた。


「本の中の登場人物が飛び出してきたとでもいうのか!?」


オレはコウタの問には、今はあえて答えずに説明を続けた。


「不可解なことはもう一つある。 この本の出どころだ。」


「オレがこの本を買ったのは『竹中書店』という古本屋だったが…。 店主の話によれば、独りの少年にタダで売りつけられた。 つうよりかは『押し付けられた』らしい。」


「店主が言うにはその少年の見た目は…年齢は俺達と同じくらいの、黒髪、翠色の目をした美少年だったらしい。」


オレの説明を黙ってじっと聴いていた。アイゾウが初めてナニカに気がついたかのように、身体をふるわせ口を挟んだ。


「六道 ソウスケか…。」


その名前は半年前に失踪した俺達のクラスメイトの名前だった。 カンがよく働くからなのか、行方不明になる前から、お調子者のアイゾウは唯一、苦手意識を持つ存在で、オレ達にも「あいつとだけは関わりたくない。 なんか不気味すぎる」と陰口じみたことをよく言っていた。 なのでオレの言いたいことにいち早く気づいたのだろう。



「まだ、あいつと決まった訳では無い。 だが店主の証言とは一致している。 調べてみる価値はあるな。」


コウタはそういうと、立上り席に掛けてあったコートを羽織った。


「どこへ行く?」


そう、オレが聞くとコウタは不思議そうな顔でこう言った。


「何処って、六度ソウスケの自宅だよ…。 あいつ一人暮らししてたんだろ? 今はもぬけの殻だが、ポリが参考に当時の部屋をそのままにしているらしいからな、いく価値しかないだろう。」


オレはコウタの言っていることに耳を疑った。


「不法侵入じゃねーか! 犯罪だぞ? お前は幽霊見えてないんだから、関係ねーだろ!! どうしてそこまで…。」


「今更、水臭いな、オレはもう興味津々で法とか今はどうでもいい気分なんだ。 アイゾウ! お前はどうする」


「そうだな…おい、クラク!この本借りていってもいいか?」


「は? わかってんのか? その本読ンじまったら、お前まで、魔王に狙われるかもしれねーんだぞ?」


オレは平気な顔で危険に首を突っ込む二人を止めようとした。 これはあくまでオレ自身の問題だ、話を聞いてもらって楽になりたかった気持ちはあったが、巻き込むわけにはいかない。


しかし


オレの言葉を聞いたコウタはは、呆れ顔でオレの方を向いて、諭してきた。


「だから、いちいち水臭えんだって。 話を聞いちゃった時点でな、もう無関係な面出来るわけねーだろ、なぁアイゾウ!」


「あぁ…いいかクラク、これはもはやお前だけの問題じゃない。 俺達は、『友達』だからな…。 だから俺達はお前にかけられた呪縛を解くために出来るだけのことはする。 だから、お前も自分にしてやれることを真っ先に考えろ。」


オレは二人の言葉を聞いて涙目になった。半年間、これだけオレの話を真剣に受け止めてくれた存在はこの二人しかいなかったからだ。

 

 オレは決心を固めると二人と同様に席を立って感謝述べた。


「ありがとな…ふたりとも。」


「例はすべて解決してからいくらでも聞く。」


アイゾウはそういうと、俺達に向かって、拳を突き出した。 俺達も愛憎に拳を合わせると、それを確認した愛憎が再び口を開いた。


「わかるだろ、俺達は今『最強』だ。

クラクに取り憑いたのが魔王だが幽霊だか知らねーが、とっと謎を解いて、ぶっ飛ばしてやろうぜ!」


店を出た俺達はそれぞれの道へ分かれていった。 だが3人とも共通の目的に向け、しっかりと歩を進めていった。

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