第八話  亡霊

「まじかよ!! いいか? そのクソ野郎は絶対カウンセラーじゃない、おまえ騙されてるんだよ!」


「んなわけねーだろ! 警察が直接紹介やつだぞ?」



スキナヤラーメンの2階イートインテーブル席でオレはラーメンを啜りながら、今日病院で起こったことを、二人に話すと。 突然アイゾウは立上り、突然鬼の形相でそういった。それを見て佐々木コウタはいつもの呆れ顔をさらし、正論でアイゾウを宥める。


「いや…マジマジオレ昔、『発達障害』で小児科通ってたことあったんだけどよ…。 そこの先生はいつも病室に俺が入ってくるなり野球を一緒にやってくれて、俺の話もちゃんと聞いてくれる、いい先生だったよ。」


「じゃあクソ野郎はお前の見てくれた先生とは違う、ただのクソ野郎のカウンセラーだ

あるわけねーよ職業のなりすましなんて…陰謀論の見過ぎだ。」


旗から見たらそのやり取りは、喧嘩にも見えるそれは、いつも通りのじゃれ合いだとオレはわかっていたのでオレはラーメンを啜りながら特に割って入ることもしなかった。 それよりも病室の中で野球するって構図の謎さのほうが、オレにとってはよっぽど気がかりだった。




「なぁ あの店員のネーチャンさぁ…おれたちのこと見てたよな〜! 絶対に気になっていると思うんだが…。 オレ心理学勉強してたことあるから分かる。」


「はぁ アイゾウ、 やめろよ。 この世で最もイタイ言葉は、『オレ心理学やってます』の類の言葉だからな。 だからそれ専攻してる大学生も言わないだろ?」


「あぁ そうなの? オレ大学生の友達いないからわかんねぇや!!」


 オレはいつも通りの二人の会話になんだか救われた感じがした。 特にアイゾウの底しれぬ呑気さには、極端に陰気なオレの弟がこいつにだけは懐く理由がなんとなくは理解できるほど、実際見ていて和まされた。


 それと同時にこんなにもオレを和ませてくれる二人なら、オレを今の苦しみから救ってくれるかもラーメン屋に入る前からオレはずっとそう思っていた。


「なぁ…オレ…コレ言ったら、おまえらはオレのことを…頭のおかしいやつだって思うかもしれない。 実際にカウンセラーの荻窪には幻覚を見てるって相手にされなかったんだが…。」


「ん?」


「なんだよ…。」


コウタとアイゾウが急にかしこまった、オレを見て、静かに疑問を浮かべた顔で俺の方を見た。俺は深く深呼吸してから、ゆっくりと震える声を出した。


「幽霊が…。 見えてるんだ…。巨体で角が生えた。女の幽霊…。悪魔みたいなやつなんだよ…。」


「あぁ…。そうかそれで、そいつにはなにかされたか?」


「え?」


俺は戸惑った。 てっきり、引かれるのを覚悟して言ったが、なんの気なしに即、落ち着き払った返答をコウタがしてきたのだ。 逆にキョトンとしたおれに今度はアイゾウがコウタと同じような感じで俺に質問してきた。


「なにか…きっかけとか…無かったか?

思い当たるフシは何でもいい…。」


「ちょっ、、ちょっとまってくれ、お前ら…こんな突拍子のない話をされて、どうしてそんなフツウにできるんだ…。 ホラ、もっとからかわれてるとか、オレの頭がおかしくなったとかって…。」


焦るオレを尻目にコウタはアイゾウの方を見た。


「アイゾウ…お前まだ言ってなかったのか?」


「言えるわけ無いだろ、最近、学校休んでたのに」


「え?なに? どゆこと?」


困惑するオレにアイゾウは、顔を近づけて、静かに告げた。


「静かに、そして振り返るな。」


「お前の奴とは、違うやつだが、オレにも見えている。 お前が気絶した日からな…。」


「え?ホントに?」


余りの衝撃にオレは、身震いしたあとアイゾウに聞き返した。


「あぁ…まさしくアレは…幽霊だ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る