第五話 3つ目の冥動
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フロリダ州 オーランドにある名門大学 アルセットエルーケム大学。西暦2027年12月10日
午後2時を過ぎた頃だった。アンダーソン教授はいつも通り、自分の受け持つ授業、『文化的哲学』の講義を行うため、教壇に立つやいなや、鬼気迫る焦燥とした表情を浮かべ声を上げた。
「前回の…講義以来、みんなには様々な論文を提出してもらった…もちろん全て目を通した……。素晴らしかったよ…。」
「アリストテレスの半生を歴史書から読み解いたモノ、エネルギーと周波数変動を調べたもの、その他大勢…。」
相変わらず眉を潜めたまま、言いづらそうに言葉を続ける。
「ただ諸君の中で…あぁ…所謂『禁忌』に触れたものがいる…。 その禁忌とは…みんな何か判るか…?」
いつも穏やかでそれはある種の『呑気』ともいえるような態度のアンダーソン教授は真剣な眼差しで生徒たちに問題を出した。
その異様にほとんどの生徒たちは直ぐに思想し、周りの席の人間と考えを共有することによって、暫く教室内はざわついた。
5分くらいそうしてヒソヒソと声がなったがついに答えを出せるものは見つからず、見かねたアンダーソンは唯一人誰とも話さずただじっと、している一人のアジア人の青年を確認してから、皆に向け答えを明かした。
「『死』だ…。 そう、この中で人の死について研究したものがいる…。」
「ミスターオガワ!!」
アンダーソン淡々とした声で説明したかと思えば、唐突に先程のアジア人の青年の方を見上げ、名前を叫んだ。 それと同時に生徒はみな唖然した表情で、また彼を見ていた。
「……はい…。 実に実りのある…。 良い研究でしょう…。 そんなふうに言われるのは…その…心外ですね」
全ての注目を浴びて、促されるように青年・小川箸亜は立上り、不満気かつ、気だるげに返答した。
「2015年『死索禁止条約』!!二回目の講義の時に教えたはずだ!! 君もいただろう! それにそうでなくたってこの条約は君の祖国であのカルト教団が起こした事件がきっかけだ!! 君も当然知っていることだろ!」
「あぁ…もちろん…『境界を探す使者 東京三万人拉致事件』当時は私も幼かった…。 あの者たちは、それまで人類ないし生物が恐れてきた。最も強大な未知を乗り越えるために躍起になって、なりふり構わず攫い…ダメにしてきた。」
「私も当時は気が触れたその連中を間近で見続けて…新底怯えたものです。」
「だったらなぜ…。」
「奴らが解体し、間抜けなお巡りに追い回され消滅したとき…暫くして私は気づいたんです。 未だにあの教団達がもたらした…本質的な恐怖に決着はついてない…。」
「そう…死だ…奴らのやっていた。死後の世界の探求は正しかった…。 」
「…この論文の内容を読むに、研究には攫ってきた多くの子供に生きたまま『水銀』を脳に流し込んで何人も壊した…と書かれている。」
見当違いの反応をアンダーソン教授が見せたことでオガワはため息をつき、頭を抱える。
「アンダーソン教授…それが何だと言うんですか? かつてはあのイレンシュの集い、学会たちが見出した『黒い死』と『白い死』この2つ以外で…思念が行き着く先が判明したんですよ…? 3つ目の…最後の冥道が…」
「人を…子供を殺したんだぞ…!!君は…!!」
「だが…そのお陰で…!!人々は未知の『死』に怯える必要がなくなる…。全生命が目指した…地球史唯一にして最大の進化…死の克服!!」
アンダーソンの怒りの絶叫に対して、オガワはそれ以上の苛立ちと怒りで返した。
「出ていけ私の講義…いや…この国から…二度と足を…踏み入れるな…。」
「教授! 待ってください。 僕たち…足元が!」
アンダーソン教授がハシナを睨みそう言うと生徒の独りがなにかに怯えるように声を上げた。 そうして皆が足元に中止すると僅かに透明な液体が、教室の床一面に広がっていることがわかった。
「アンダーソン教授。 人が死に縛られる限り、人は完璧で潔癖な聖人君子ではいられない」
「皆さんそれでは!!また今度は互いに思念体として…彼岸で逢いましょう。」
箸亜はそう言ってライターを手放し、燃え始めた炎を尻目に教室を後にした。 アンダーソンは彼を追うため、または、生徒を避難させるために、炎の中を掻き分けて、彼の後を追おうとしたが、箸亜が指をパチンと鳴らすとひとりでに教室のドアは勢いよく閉じてしまった。
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『焦土』への掌握 ゲルニカ
モノリスランク E
タイプ 発導魔能
発導者 グーウール・クロックネス
精霊繁殖力 ☆☆☆☆☆
魔能発動精霊消費 ☆☆☆☆
クールダウン ☆☆☆☆
損壊力/死誘力 ☆☆/☆☆
能力発動スピード ☆☆☆
耐久性/タフネス ☆☆☆☆(媒塊の耐久力)
発展性/進化余地 ☆☆☆☆
・発導者の『水瓶』の媒塊から、発導者の任意で以下の3種類の液体を放出することが出来るスキル。
1 灯油のような透明色のの可燃性液体
2 発導者以外で触れた生物の重量を一回あたり強制的に55キロ加算する黒い液体
3 発導者含み摂取した生物の傷を癒やす赤い液体。 200ミリリットル摂取で致命傷でも完全回復する。
・このスキルは通常と違い発導者の精霊が生み出す媒塊からでしか、発導しないため、スキルとセットである。
・グーウール精霊は生贄を必要とせず媒塊を創ることが出来る。
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