第7話Ep10.活動報告/しつこい

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【活動報告】


日時:五月二十七日


作成:問間覚


相談者:一年十組 二梢絵未


相談内容:

 同じ本をほぼ毎日、貸し出し/返却している生徒がいて気になる。


結果:

 借りている本は日付と場所を表しており、他の生徒との待ち合わせの暗号だった。


備考:

 当人たちと話し合い、該当書籍を本当に読みたい生徒のため、また、図書委員の負担軽減のため、その暗号は廃止してもらうことになった。


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 五月三十日、月曜日。

 放課後、十七時四十分。職員棟、生活指導室。



「……ジンゴさん。――って、その……」


 サトルは机に突っ伏し、顔だけ向けてモゴモゴと話しかけた。ジンゴはそれを横目に見ながら、


「あーん? ナニ、はっきり言えよ」

「キキさんのこと好きじゃないですか」


 突然ストレートなるじゃん速度考えろよ。そう喉元まで出かかったのをグッと飲み込んで、スマホ片手にあえて興味なさげに返事をする。


「そうね。それが?」

「どこが好きなのかな、って……」

「おっぱいでかいじゃん」


 後輩を正面から見つめて真顔で言った言葉に、聞いた方は目を逸らした。


「…………聞かなきゃよかった………………」

「まーそれだけじゃないですけど。つか、ナニ。お前がそんなこと聞くの珍しいじゃん。どしたん」

「別に……。ちょっと気になっただけです。……ていうか、なんで付き合わないんですか」

「俺だって付き合えるなら付き合いてぇわ」

「告ればいいじゃないですか」

「フラれたら生きてけないじゃん」

「フラれないでしょ……」

「フラれるかもしんねーじゃん!!!! あいつ告られても全部断ってんじゃん!!!!」


 呆れたように言う声に思わず机を叩く。バンッと大きな音が響いて、サトルが身体を起こす。手のひらがジンジンと痛い。


「それはジンゴさんだってそうじゃないですか。もう学校七不思議と化してますよ」

「うるせーな、俺には俺のタイミングがあんの! お前は黙ってて!」

「はあ……」

「で? お前はどーなん。好きな他人ひとでもできた?」


 赤くなった手のひらを振りながら問いかけると、サトルはまたズルズルと机に突っ伏した。くぐもった声が隙間から漏れる。


「そういうわけじゃないですけど……。なんか」

「なんか?」

「なんか……恋愛とか興味なさそうって思ってた人にいつの間にか彼氏がいて、妙にショックというか……。ただの他人である僕がそんなこと思うのもおかしいんですけど」

「お? 失恋? 誰々? ワシオさん?」

「秘密!」


 顔を上げた後輩に睨まれる。

 図星じゃん、と喉まで出かかったのをまた飲み込むと、


「ていうか別に好きだったわけじゃないですよ。そういうのよくわからないし……。ただ、なんか……勝手に仲間だと思ってたけどそうじゃなかったんだ、みたいな……」


 サトルはまた顔を伏せてゆっくりと話し始めた。

 ジンゴはスマホを取り出し、片手間みたいに相槌を打つ。


「ふーん? なんで仲間だと思ってたん?」

「話合うし……。そういうハナシが出てきたこともなかったし……」

「やっぱ好きだったんじゃん」

「だから好きじゃないって! しつこいなぁもう!」

「いひひひっ。へいへい、そうですね」

「おつかれさまでーす!!」

「お、カイ! いいところに! サトルくん失恋会場はこちらです!」

「え!? サトル先輩フラれたんですか!? ていうか好きな人いたんですね!?」

「失恋もしてなければフラれてないしそもそも好きな人もいない!! ひっぱたきますよふたりとも!!」


 生活指導室に男子たちの笑い声が響き渡った。




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作者コメント


 お読みいただきありがとうございました。明日も更新します。

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