サンタ・デコ・ルテ(2)(2023/12/07)

 朝食時の三田みつだ家では、たまには糖分脂肪分を控えようとコーヒーに入れる砂糖とミルクを我慢するパパの図を見ることができたが、けっきょく飲みきれずに残してしまうことおよそ八割。そうすると自分のミルクを半分ほど飲んだ娘が「ちょーだい」とパパの残したコーヒーを手に取ることになっていた。

 上手に注げてにんまり。下のほうで層になったのを見てうっとり。中々に多いぞという三田の心配をよそに、くるくるスプーンでかき混ぜる。みるみるミルクが色づいていく。

 三田の娘は苦みに強いのだ。「よーし!」とひとつ頷いた彼女は、楽しそうな寄り目でマーブル模様を見つめながら口をつけた。

「おいしー!」

 コップに添えられた、ちんまりした両の指があざとい。しかしあまりにも可愛い。

 これが妄想ではなく記憶の再生であることに、三田は深く感謝した。

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