第二章 サンタ・デコ・ルテ

サンタ・デコ・ルテ(1)(2023/12/06)

 冬は自販機の「あたたか〜い」表示がされている缶コーヒーに限る。しかし三田みつだは甘党であるためブラックは論外。選ぶのはもっぱらラテであった。

 昼下がりの公園。葉を落とした木々の作る影は淡い。ベンチでひなたぼっこでもしようか。なんでもない会話とかしちゃってさ。その前に喉乾いたよね僕買ってくるよ。いいよいいよこれくらい遠慮しないで。

 本日も三田の妄想は全速力だ。

「おまたせ」

「ありがと――きゃっ」

 買ってきた缶を渡すとき、相手の頬に当てるのは定番だろう。むしろその反応を見るのが醍醐味だ。

 とはいえ娘相手にこれをこのままやるわけにはいかず、ひとり芝居をするしかない。さすがに頬だと痛いおじさんになりかねないので額に。

 意外と熱い。

 ラの発音がままならない。

 それがサンタ・デコ・ルテである。 

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